はじめに
本記事の目的
本記事は、更年期に多い「低血圧」と「めまい」の関係を分かりやすく解説することを目的としています。ホルモンの変動や自律神経の乱れがどうしてめまいにつながるのか、具体的な症状や対処法まで丁寧に説明します。
対象となる方
次のような方に向けた内容です。
- 更年期に入り、立ちくらみやふらつきを感じる方
- 病院で原因がはっきりしないめまいに悩む方
- 家でできるセルフケアや受診の目安を知りたい方
記事の構成と使い方
本記事は全7章で構成しています。第2章で原因を、第3章で低血圧特有のめまいの特徴を、第4章で関連要因を扱います。第5章では高血圧との違いを、第6章で受診の目安と簡単なセルフケアを紹介し、第7章で漢方や医療的対応を説明します。
簡単な記録を取ると理解が深まります。例えば、めまいが起きた時間、姿勢、食事や睡眠の状況をメモしておくと、後の対処が楽になります。どうぞゆっくり読み進めてください。
更年期と「めまい」の関係
ホルモン変化と自律神経の関係
更年期は卵巣の働きが弱まり、特にエストロゲンが減少する時期です。エストロゲンは血管や自律神経の働きを整える役割があり、量が急に変わると自律神経が乱れやすくなります。自律神経のゆらぎがめまいの大きな原因です。
めまいのタイプと特徴
- 回転性めまい:周囲や自分がぐるぐる回る感じ。耳の内耳の病気で起きやすいです。
- 浮動性めまい:ふわふわ、フラフラする感じ。更年期で多いタイプです。
- 立ちくらみ系:立ち上がったときにクラッとする感じ。血圧の変動と関係します。
更年期に多いめまいの具体例
更年期の方は「急にふわっとする」「歩いているとフラッとする」「立ち上がると目の前が暗くなる」といった症状を訴えます。日中の疲れ、寝不足、ストレス、暑さや冷えの変化で悪化しやすいです。
なぜ更年期に起きやすいのか
エストロゲン低下で血管の柔軟性が落ち、血圧や血流が不安定になります。自律神経のバランスが崩れると、耳や脳へ安定した血流が届かずめまいが生じます。また、ホルモン変動が不安や睡眠の乱れを招き、それがめまいを強めます。
(この章では、原因の全体像と日常での見え方に焦点を当てています。詳しい対処法は第6章で説明します。)
更年期の低血圧とめまいの特徴
概要
更年期に入ると低血圧や起立性低血圧によるめまいが増えます。朝の強いめまい、立ち上がったときに「クラッ」とする感覚が典型です。
主な特徴
- 朝や起床時に起きやすい。長時間横になった後に特に起こりやすいです。
- 急に立ち上がるとふらつく、目の前が暗くなる、場合によっては失神しそうになる。
- 入浴後や暑い場所、食後にも起きやすい。
- 倦怠感や集中力低下を伴うことがあります。
なぜ更年期に多いのか
更年期は筋肉量が減りやすく、足の筋肉(血液を心臓へ戻すポンプ)が弱くなります。自律神経の調整力も低下し、体が血圧の変化に素早く対応できません。ホルモン変化で血管の反応も変わり、血圧が不安定になりやすくなります。
家庭での簡単チェック法
- 座った状態や仰向けで数分休んだ後、ゆっくり立ち上がって症状が出るか確認します。
- 可能なら血圧計で横→立位の差を測ると分かりやすいです(目安として収縮期血圧が20mmHg以上下がると起立性低血圧の可能性あり)。
日常でできる対策
- 立ち上がるときはゆっくり、まず座位で足を動かして血流を促す。
- こまめに水分と塩分を摂る。
- 足の筋力を保つ運動(つま先立ちなど)を続ける。
- 暑いお風呂は避け、熱いシャワーは短めにする。
- 着圧ソックスの利用や服薬の見直しも有効です。
受診の目安
- 頻繁に失神する、または日常生活に支障がある場合
- 倦怠感やめまいが長引く、薬の副作用が疑われる場合
これらは医師の診察や検査が必要です。
更年期のめまいに関与するその他の要因
貧血(鉄不足)
鉄が不足すると血液の酸素運搬力が落ちます。具体的には、だるさ・動悸・息切れ・めまいが出やすくなります。顔色が悪い、爪が割れやすいといった兆候があるときは貧血を疑い、血液検査(ヘモグロビンやフェリチン)を受けると確かめられます。
血行不良
冷えや長時間の同じ姿勢は血流を悪くします。立ち上がったときにクラッとする場合は起立性のめまいが考えられます。温める・軽い運動で血行改善が期待できます。
ストレス・睡眠不足・不規則な生活
睡眠が足りない、食事が不規則、過度のストレスは自律神経を乱します。自律神経の乱れはふわふわする「非回転性めまい」を招きやすいです。規則正しい生活と休息が重要です。
耳の疾患(平衡器の問題)
耳の奥にある平衡感覚の器官に異常があると、回転するような激しいめまいや耳鳴り、聞こえの変化が起きます。急に激しいめまいが来る場合は耳鼻科での診察が適切です。
高血圧や他の疾患の関与
高血圧や内科的な病気でもめまいが起きます。頭痛・吐き気・手足のしびれなど他の症状があるときは早めに受診してください。
日常でできる簡単な対処
水分補給、鉄を含む食品(赤身肉やほうれん草)、適度な運動、十分な睡眠、冷え対策を心がけてください。症状が強い・急に悪化する場合は医療機関を受診しましょう。
更年期の「高血圧」との違い
背景
更年期は女性ホルモン(エストロゲン)が減るため、血管の柔軟性が落ちて高血圧になりやすくなります。一方で、もともと低血圧の人や自律神経が乱れやすい人は、めまいや立ちくらみなど低血圧の症状が強く出やすいです。
症状の見分け方
- 低血圧由来:立ち上がったときや起床時にフワッとする、気が遠くなる、冷えや疲れやすさを伴うことが多いです(起立性低血圧)。
- 高血圧由来:慢性的に頭重感や頭痛、耳鳴りを感じることがありますが、軽い高血圧は無症状のことが多いです。めまいが常時続く場合や激しい頭痛を伴う場合は高血圧の影響も疑います。
血圧測定のポイント
- 寝ている状態、座っている状態、立ち上がった直後の順で測ると違いが分かります。
- 朝晩で記録してパターンを見ると、立ちくらみが起きる場面と血圧の変動が結び付きます。
生活で気をつけること
- 朝の急な立ち上がりをゆっくりにする、十分な水分を取る、塩分や薬の管理を医師と相談する。
- 血圧が高めなら体重管理や運動、食事に気をつけます。
医療機関を受診するときの目安
- 血圧が非常に高く、強い頭痛や吐き気、視力障害があるときはすぐ受診してください。
- 立ちくらみが繰り返し日常生活に支障がある場合は、低血圧の検査や自律神経の評価を受けましょう。
受診の目安とセルフケア
受診の目安
めまいが長く続く(数日〜数週間)、立てないほど強い、あるいは手足のしびれやろれつが回らない、片側の脱力、激しい頭痛、胸の痛みや息苦しさを伴う場合は、速やかに受診または救急外来を受けてください。耳鳴りや高度の吐き気、視界がぼやけるといった症状も早めの受診が望ましいです。まずは内科や耳鼻科を受診し、必要に応じて神経内科や循環器科を紹介されます。
日常のセルフケア
- 生活のリズムを整える:毎日同じ時間に起床・就寝して睡眠を十分にとります。睡眠不足はめまいを誘発します。
- 食事と栄養:鉄分(ほうれん草、レバー、赤身肉)やビタミンB群(卵、納豆、全粒穀物)を意識して摂り、水分もこまめに補給します。偏った食事や急なダイエットは避けましょう。
- 運動と体力づくり:無理のない範囲で散歩や体幹の軽い運動、立ちくらみ対策の筋力トレーニングを行います。バランス訓練(片足立ちなど)も有効です。
- ストレス管理:深呼吸、軽いストレッチ、趣味の時間を作るなどで心身の負担を減らします。
めまい発作時の対応
- 安静を優先し、座るか横になります。転倒を防ぐため体を支えます。
- 急に立ち上がらないようにし、ゆっくり姿勢を変えます。
- 深呼吸や水分補給を行い、必要なら塩分も摂ります。乗り物酔いのような吐き気がある場合は冷たいタオルで額を冷やすと楽になることがあります。
- 発作の記録をつける:発作の時間、持続、誘因、同時に出た症状や服薬状況をメモして受診時に伝えてください。
受診時に伝えるポイント
発作の始まり方、頻度、持続時間、誘因、ほかの症状(耳鳴り、しびれ、頭痛、胸症状)、普段の薬、基礎疾患を整理しておくと診断が進みます。必要な検査や受診先を医師と相談しましょう。
更年期めまいへの漢方・医療的アプローチ
漢方での考え方とよく使われる処方
更年期のめまいは体質や症状で治療方針が変わります。漢方は全身のバランスを整えることでめまいを和らげます。よく用いられる処方に五積散(ごしゃくさん)や真武湯(しんぶとう)などがあります。例として、冷えやむくみが強ければ真武湯、ストレスや不安が背景であれば五積散が選ばれることがあります。
漢方の使い方と実際
漢方は一人ひとりに合わせて処方を調整します。漢方医や専門医に相談し、舌や脈、症状の全体から判断してもらってください。効果は数週から数か月かかることが多く、途中で自己判断で中止しないことが大切です。
医療的な診察と検査
めまいは原因が多いため、内科・婦人科・耳鼻科などで原因をしっかり調べます。立ちくらみがあるときは起立時血圧測定、耳の問題が疑われれば聴力検査や眼振検査、神経症状があれば頭部画像検査(必要時)などを行います。
西洋医学での治療選択肢
原因に応じて治療を選びます。血圧の乱れや貧血があればそれを改善する治療、めまいそのものには一時的なめまい止めや吐き気止め、理学療法として前庭リハビリテーションを行うことがあります。更年期症状が強い場合は婦人科でホルモン療法を検討することもあります。
注意点と相互作用
漢方も薬です。他の薬と相互作用や副作用が出ることがあります。特に血液を薄くする薬や降圧薬を使っている方は、医師や薬剤師に必ず相談してください。自己判断で長期間放置しないでください。
受診の目安
・めまいが急に始まった、強い頭痛やしびれ、意識を失いかけた場合
・日常生活に支障があるほど頻繁・重度のめまい
・めまいに加えて胸痛や呼吸困難がある場合
これらがあれば早めに受診してください。