目次
はじめに
本記事は、健康診断で「高血圧」と指摘された方に向けて、基準値や診断の流れ、検査内容、リスク、対処法、日常での血圧測定のコツまでを分かりやすくまとめたガイドです。
この記事の目的
- 健康診断の結果を見て不安になった方が、次に何をすればよいか判断できるようにすること。
- 専門用語をできるだけ使わず、具体的な例や手順で説明すること。
想定する読者
- 健康診断で高血圧と指摘された方や、その家族。
- 自分の血圧管理を見直したい方。
本書の読み方
各章は独立して読み進められます。まずは第2章で基準値を確認し、必要に応じて医療機関の受診や測定方法(第7章)を参考にしてください。早期発見・早期管理が大切ですので、無理なく一歩を踏み出しましょう。
健康診断で「高血圧」と診断される基準値
診察室血圧(病院・健診で測る血圧)の基準
- 高血圧の目安は、収縮期血圧(上の血圧)140mmHg以上、または拡張期血圧(下の血圧)90mmHg以上です。例:135/88mmHgなら拡張期は正常ですが収縮期は境界に近いため注意が必要です。
家庭血圧(自宅で測る血圧)の基準
- 家庭での基準はやや低く、収縮期135mmHg以上、または拡張期85mmHg以上を高血圧とします。朝と夜に複数回測ることで、より正確に判断できます。例:朝の在宅測定で138/86mmHgが続く場合、受診を検討します。
血圧の程度による分類(目安)
- 高値血圧(境界域): 診察室で135〜139/85〜89mmHg付近や、家庭で同等の値
- I度高血圧(軽度): 診察室140〜159/90〜99mmHg
- II度高血圧(中等度): 診察室160〜179/100〜109mmHg
- III度高血圧(高度): 診察室180mmHg以上、または拡張期110mmHg以上
(注)上記は一般的な目安です。測定の状況や機器、個人差で変わるため、1回だけの高値で即治療とはならないことが多いです。測定回数を増やし、家庭血圧や24時間血圧測定などを組み合わせると正確に評価できます。
健康診断で高血圧を指摘された場合の流れと注意点
検診で高血圧を指摘されたら(初動)
検診で「高め」や「要再検査」と言われたら、まず結果を落ち着いて確認してください。多くはその場の1回測定での判定です。自己判断で慌てず、次のステップを踏むことが大切です。
医療機関での再診と診断の流れ
かかりつけ医や内科を受診して血圧を再測定します。診察室での一回測定だけで確定せず、必要に応じて複数回の測定や24時間血圧測定(ABPM)を行います。医師は生活習慣や薬の有無も確認します。
家庭での継続測定のすすめ
家庭血圧を数日〜数週間、朝晩に記録すると判断に役立ちます。上腕式血圧計を推奨します。測定前は5分ほど安静にし、腕は心臓と同じ高さにして座って測ってください。1回の測定でなく、同じ条件で2回測り平均を取ると安定します。
「白衣高血圧」と「病院で正常でも家庭で高い場合」
病院の緊張で高く出る白衣高血圧があります。逆に病院では正常でも日常で高い場合もあり、どちらも見逃さないため家庭測定やABPMが重要です。
注意点と受診の目安
測定時はカフのサイズが合っているか確認してください。薬は医師の指示なしに中止しないでください。目安として、収縮期(上の値)が180mmHg以上や胸痛・息切れなどの症状がある場合は速やかに受診してください。
高血圧の診断方法と追加検査
基本は血圧測定
診断の出発点は適切な血圧測定です。診察室での測定に加え、自宅血圧や24時間血圧(ABPM)を行うとより正確になります。白衣高血圧や仮面高血圧の判別に役立ちます。
血液・尿検査
腎機能(クレアチニン・eGFR)、電解質(特にカリウム)、血糖値や脂質を調べます。若年発症や治療抵抗性ではホルモン検査(アルドステロン、レニン、コルチゾールなど)を追加し、二次性高血圧の有無を調べます。尿検査では蛋白や血尿、微量アルブミンを確認します。
心臓・血管の検査
心電図で不整脈や心肥大の手がかりを探します。心エコーは心臓の構造や機能を評価します。頸動脈エコーで動脈硬化の状態を確認できます。
画像検査
腎臓や副腎、血管の異常を疑う場合は腹部超音波、CT、MRIを行います。腎動脈狭窄や副腎の腫瘍などが見つかると治療方針が変わります。
睡眠時無呼吸の検査
睡眠時のいびきや日中の強い眠気がある場合、簡易検査や終夜睡眠ポリグラフ検査で睡眠時無呼吸症候群(OSA)を評価します。OSAは高血圧の原因になります。
追加検査が省略される場合
健康診断ですでに必要なデータがそろっていると、重複検査を避けられます。検査の要否は年齢、発症時期、薬の効き具合、症状に基づいて医師が判断します。
検査結果は治療方針に直接つながります。疑問があれば医師に過去の健康診断結果を提示し、詳しい説明を受けてください。
高血圧が健康に及ぼすリスク
高血圧は自覚しにくい病気です
高血圧は症状が出にくく、気づかないうちに進行します。放置すると血管や臓器にダメージが蓄積し、重大な病気を招きます。
主な合併症と具体例
- 脳卒中(脳出血・脳梗塞): 血管が破れたり詰まったりして、片麻痺や言語障害が突然出ます。
- 心筋梗塞・狭心症: 心臓の血管に負担がかかり、胸の痛みや息切れが出ます。
- 心不全: 心臓が疲れて十分に血液を送れず、息切れやむくみが起きます。
- 腎臓病・腎不全: 腎臓の細い血管が傷つき尿たんぱくやむくみで異常が分かります。
- 眼の障害: 眼底出血や視力低下が生じます。健康診断の眼底検査で早期発見できます。
- 末梢動脈疾患・認知機能低下: 足のしびれや冷え、血管性認知症のリスク増加につながります。
どうして起こるのか(仕組み)
持続的に高い血圧が血管の内壁を傷つけ、壁が厚く硬くなります。血流が悪くなり臓器の酸素不足やプラーク形成で詰まりやすくなります。
早期発見のための検査と注意点
健康診断の心電図、眼底検査、尿検査(尿たんぱく)、血液での腎機能検査は長期的影響を見つける上で有用です。重い頭痛、急な片側の麻痺、激しい胸痛、視力の急激な低下があれば直ちに受診してください。
これらのリスクは適切な治療や生活改善で大きく下げられます。対応方法は第6章で詳しく説明します。
高血圧と診断された場合の対応策
医療機関の受診と継続的な測定
高血圧と診断されたら、まず医療機関を受診して医師と治療方針を決めます。家庭血圧を毎日測って記録することが最優先です。朝(起床後、薬を飲む前)と夜(就寝前)に座って5分安静にし、同じ姿勢で2回測ると良いです。
生活習慣の見直し(具体例)
- 減塩:1日6g未満を目標にします。加工食品や外食の塩分が高いので、表示を確認し醤油や調味料は控えめに。代わりに酢やレモン、香草で風味を出すと続けやすいです。
- 運動:有酸素運動を週に合計150分程度(例:速歩き30分×5日)を目安に。筋力トレーニングを週2回ほど取り入れると効果的です。
- 禁煙・節酒:喫煙は避け、飲酒は量を減らします(医師と相談してください)。
- 食事:野菜や魚、低脂肪の乳製品を中心に、バランスよく食べます。
薬物治療とフォロー
医師はリスクや合併症、血圧の程度に応じて薬を選びます。副作用や薬の相互作用が出ることがあるので、医師の指示どおりに服薬し、自己判断で中止しないでください。定期的な受診と検査で治療効果を確認します。
家庭血圧の記録と医師との連携
測定値は日付・時刻・値をノートやアプリに記録し、受診時に提示します。変動が大きい場合や値が急に高くなったと感じたら早めに相談しましょう。
緊急受診の目安
顔のしびれ、ろれつが回らない、胸の強い痛み、激しい頭痛やめまいなどの症状がある場合はすぐに救急外来を受診してください。
正しい血圧測定と記録のコツ
血圧は測り方や記録の仕方で値が変わります。毎日同じ時間(朝起床後・夜就寝前)に、2~3回測って平均を取ると実情に近い値が得られます。
測定前の準備
- 5分ほど安静にしてから測る。深呼吸や会話は避ける。
- カフェインや喫煙、運動は測定30分前から控える。
- 排尿を済ませ、上着はまくって腕を出す。
正しい姿勢と測り方
- 椅子に深く座り、背もたれに寄り掛かる。足は床に着ける。
- 腕は心臓の高さに置く。袖の上からは測らない。
- 上腕用の自動血圧計を使うと安定する。手首型は位置で誤差が出やすい。
- 2~3回測定し、1〜2分間隔で平均値を記録する。
記録のポイント
- 日付・時刻・収縮期(上)/拡張期(下)・脈拍を書く。
- 薬を飲んだか、体調や症状(めまいなど)もメモする。
- 紙の血圧手帳やスマホアプリで継続的に管理し、診察時に持参する。
機器の管理
- 適切なカフサイズを選ぶ。定期的に病院で比較して精度を確認する。
まずは1週間、朝晩続けて基準となる値をつくると医師との相談がスムーズになります。丁寧に測り、記録を続けましょう。
まとめ:高血圧は「早期発見・早期管理」がカギ
早期発見と継続的な管理が高血圧対策の基本です。健康診断で注意を受けたら放置せず、家庭での血圧測定と医療機関での再評価を必ず行ってください。
日常で気をつけること
- 定期的な測定:朝晩の血圧を決まった時間・姿勢で記録します。短期間の変動に振り回されず、傾向を見ることが大切です。
- 生活習慣の見直し:減塩(目安は小さじ1杯程度の工夫)、適度な運動(週に合計150分が目安)、禁煙、節酒、体重管理を心がけます。
- すぐに医師に相談:家庭血圧の値や症状(強い頭痛、めまい、胸の痛みなど)が気になる場合は速やかに受診しましょう。
医療との連携
- 医師は家庭血圧の記録や追加検査を基に治療方針を決めます。薬が必要になれば、指示通りに続けることが大事です。
- 定期受診で薬の効果や副作用を確認し、必要に応じて調整します。
早めに対処すれば重い合併症を防げます。自分の血圧を日々見守り、疑問があれば遠慮なく医療機関に相談してください。