高血圧予防と血圧管理

妊娠臨月に知っておきたい高血圧の症状と対策

はじめに

概要

この文書は、妊娠後期(臨月)における妊娠高血圧症候群についてまとめたものです。定義や主な症状、診断基準、リスク要因、母体や胎児への影響、臨月のむくみの原因などを分かりやすく解説します。

目的

妊娠高血圧症候群に関する基本的な知識を提供し、臨月に特有の変化や注意点を理解していただくことを目的とします。妊婦さん本人だけでなく、家族や支援者にも読んでいただける内容です。

読み方のポイント

専門用語はできるだけ避け、具体例で補足します。症状や対応については医師の診断が最優先です。本資料は医療の補助情報としてお使いください。

この文書の構成

全6章で構成します。まず本章で全体像を示し、続く章で詳しい症状や診断、リスクについて順に説明します。必要な場合は医療機関にご相談ください。

妊娠高血圧症候群とは

概要

妊娠高血圧症候群(にんしんこうけつあつしょうこうぐん)は、妊娠中に血圧が異常に上がる状態を指します。一般に妊娠20週以降に発症し、放置すると母体や赤ちゃんに影響を及ぼします。わかりやすく言うと、赤ちゃんに必要な栄養や酸素が足りなくなるサインが体に出た状態です。

胎盤の役割と異常

胎盤は母体と赤ちゃんをつなぐ大切な器官です。胎盤がうまく形成されないと、赤ちゃんに十分な血液が届きません。たとえば胎盤の血管が細い、あるいは十分に伸びないといった問題が生じます。こうした胎盤の形成異常が根本的な原因と考えられています。

なぜ血圧が上がるのか

胎盤からの血流が不足すると、母体は「もっと血を送らなければ」と反応します。心臓や血管が働きを強め、血圧が上昇します。イメージとしては、水道の送水が足りないときにポンプを強く動かすようなものです。

発症時期と頻度

多くは妊娠20週以降、特に後期に起こります。初めて妊娠した人や高齢出産の人に多い傾向がありますが、誰でも発症する可能性があります。

母体と胎児への影響

母体側は頭痛、めまい、むくみ、尿のたんぱく増加などの症状が出ます。重くなるとけいれんや肝臓・腎臓の障害につながることがあります。胎児側は成長不良や早産、最悪の場合は酸素不足による影響が出ます。

予防と早期発見

完全に防ぐ方法はありませんが、定期検診で血圧と尿たんぱくをチェックすることで早期発見に繋がります。生活では塩分を控えめにし、無理のない運動や十分な休息を心がけると良いです。

受診の目安

急なむくみ、激しい頭痛、視界のかすみ、息苦しさなどがあればすぐ受診してください。定期健診での血圧上昇は主治医と相談し、必要なら治療や入院を検討します。

臨月での妊娠高血圧症候群の症状

臨月に現れる妊娠高血圧症候群の代表的な症状を、わかりやすく整理して説明します。少しでも心配な点があれば、早めに産科医に相談してください。

症状一覧

  • 血圧の上昇(目安:140/90 mmHg以上)
  • たんぱく尿(尿にたんぱくが出る)
  • 手や顔、足などのむくみ(指輪がきつくなる、靴が入らないなど)
  • 急な体重増加(数日〜1週間で顕著に増える)
  • 尿量の減少(トイレの回数が減る、尿が少ない)
  • 視覚の変化(かすむ、ちらつき、光がまぶしい)
  • 強い頭痛(鎮痛薬で治まらないもの)
  • みぞおちや右上腹部の痛み(肝臓付近の鋭い痛み)
  • けいれん(意識消失や全身の硬直)

症状の具体的な見え方

血圧は家庭用の血圧計で測ると変化がわかります。むくみは朝より夕方に強くなることが多く、靴がきつくなるなどで気づきます。視覚異常は短時間に起きることがあるため、運転や作業は控えてください。

緊急で受診すべきサイン

けいれん、意識障害、視力消失、非常に強い頭痛、激しい右上腹部痛、または血圧が極端に高い(医師に指示された基準を超える)場合は、すぐに救急外来や産科へ向かってください。

家庭でできる対処と受診の目安

血圧と尿のチェックを定期的に行い、体重増加のペースを記録してください。症状が悪化する、あるいは上記の緊急サインが現れたら速やかに医療機関へ連絡してください。医師の指示に従うことが最も重要です。

臨月でのむくみの原因

主な原因

臨月のむくみは、成長した子宮が下大静脈(心臓へ戻る大きな静脈)を押しつぶし、脚や足に血液や体液がたまりやすくなることが大きな原因です。血液の戻りが悪くなると、足首やふくらはぎが腫れやすくなります。

悪化させる要因

  • 長時間の立ち仕事や座りっぱなし、脚を組む姿勢は血液が滞りやすくなります。具体例:通勤でずっと立っている、デスクワークで休憩が少ない場合。
  • 塩分の過剰摂取(味の濃い外食や加工食品の多用)は体に水分をため込みます。
  • 妊娠中は血液量が増えるため、むくみやすくなります。気温が高い日もさらに悪化します。

見分け方(注意点)

足だけでなく、顔や手が急に腫れたり、強い頭痛や視力の変化、高血圧を伴う場合は妊娠高血圧症候群の可能性があります。そのような症状があれば速やかに受診してください。

自宅でできる対処法

  • 左側を下にして横になると子宮の圧迫が和らぎます。続けて15〜20分ほど休むと効果的です。
  • 足を心臓より高くして休む(クッションで足を少し高くする)。
  • こまめに歩く、足首を回すなど血流を促す軽い運動を取り入れる。
  • 塩分の量を見直す(加工食品を減らす)。水分を極端に減らさないことも大切です。
  • 弾性ストッキングは症状を和らげる場合があります。使用前に医師や助産師に相談してください。

診断基準と分類

血圧の基準

  • 軽症:収縮期血圧(上の血圧)140 mmHg以上、または拡張期血圧(下の血圧)90 mmHg以上。通常は安静時に繰り返し測り、確認します。実際には別々に2回以上測って判定します。
  • 重症:収縮期160 mmHg以上、または拡張期110 mmHg以上。重症は母子ともに合併症のリスクが高く、速やかな対応が必要です。

診断の区分(簡単な説明)

  • 高血圧合併妊娠:妊娠前から高血圧がある、または妊娠20週以前に高血圧が判明した場合を指します。
  • 妊娠高血圧症:妊娠20週以降に新たに高血圧が出現し、蛋白尿や臓器障害を伴わないもの。
  • 妊娠高血圧腎症(いわゆる子癇前症/preeclampsia):妊娠20週以降の高血圧に加え、尿に蛋白が出る、あるいは肝臓や血液の異常など臓器障害が見られる状態です。
  • 加重型妊娠高血圧腎症:慢性的な高血圧に妊娠中に新たな蛋白尿や臓器症状が加わった場合や、既存の妊娠高血圧症が重症化した状態を指します。

発症時期による分類

  • 早発型:妊娠34週未満に発症すると呼び、胎盤の機能低下や胎児への影響が出やすく、治療や早期分娩が検討されます。
  • 遅発型:妊娠34週以降に発症するもので、母体の症状が中心となることが多いです。

測定のポイントと具体例

  • 血圧は安静時に測り、1回だけで判断しないでください。施設では別々に2回測るか、24時間血圧測定を行う場合もあります。
  • 具体例:妊娠24週で初めて140/90以上になれば妊娠高血圧症の疑い。妊娠前から150/95で治療中なら高血圧合併妊娠の可能性が高いです。

診断は総合的に行います。気になる症状や測定値があれば早めに産科で相談してください。

妊娠高血圧症候群になりやすい人

はじめに

妊娠高血圧症候群になりやすい人の特徴を分かりやすくまとめます。該当する場合は早めに受診し、医師と対策を相談してください。

初産婦(はじめての妊娠)

初めて妊娠する人はリスクが上がります。定期的な血圧測定と尿検査をしっかり受けてください。

高齢妊娠・若年妊娠

年齢が高い(一般に35歳以上)とリスク増加が知られます。逆に、若年(特に10代)も体の変化に対応しにくくリスクが高まることがあります。

肥満・代謝異常

体重が多い人や糖代謝の異常(糖尿病のある人)は血圧管理が難しくなりやすいです。体重管理や血糖コントロールが重要です。

既往歴・基礎疾患

過去に妊娠高血圧症候群を経験した人、既に高血圧・糖尿病・腎臓病・自己免疫疾患がある人は再発や悪化のリスクが高いです。

生活習慣・家族歴

喫煙、運動不足、偏った食事、家族に高血圧や妊娠高血圧症候群の人がいる場合もリスクになります。

注意点と対策

該当する人は妊婦健診を定期的に受け、体重・血圧・尿蛋白・血糖をチェックします。生活習慣の改善や必要なら薬の調整を行い、症状が出たらすぐ受診してください。

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