目次
はじめに
本書の目的
本書は、製薬会社エーザイ株式会社が展開するヘルスケア関連事業「ヘルケア」について、事業理念から具体的な取り組みまでを分かりやすくまとめることを目的としています。専門用語は最小限にし、実例や活動の背景を交えて説明します。
対象読者
エーザイの事業に関心のある一般の方、ヘルスケア分野で働く方、自治体や医療・介護の関係者、そして社内のメンバーを想定しています。
本書の構成と読み方
全8章で、理念・商品・予防活動・社会貢献・IT活用・企業文化まで幅広く扱います。各章は独立して読みやすくまとめていますので、関心のある章からお読みください。
本書の使い方
事業の全体像を把握したい方は第2章から順に読むことをおすすめします。特定のテーマを詳しく知りたい場合は、目次から該当章へ進んでください。図表や用語解説は必要に応じて補足します。
このあと、第2章以降で事業理念や具体的な取り組みを丁寧に説明していきます。どうぞご一読ください。
エーザイのヘルスケア事業理念と展開
企業理念「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)"
エーザイはhhcを掲げ、患者や生活者のQOL(生活の質)向上を最重要に据えます。病気を治すだけでなく、予防や日常の健康維持まで広く貢献する姿勢です。
事業の重点分野
医薬品の研究開発を中核に、認知症対策やフレイル予防、栄養・生活支援まで幅広く取り組みます。具体例としては、薬の提供に加え、日常で続けやすい製品や地域向けの支援サービスを展開します。
サイエンスとデータの活用
科学的根拠を重視し、臨床データや生活データを活用して効果確認を行います。運動や栄養の実証研究を通じて、実際に役立つソリューションを作ります。
他産業との連携
医療・介護・IT・食品などと協働し、生活の場で使える仕組みを作ります。たとえば地域の健康教室やデジタルツールの共同開発など、現場とつながる活動を進めます。
社会善の実現
個人の健康改善が社会全体の負担軽減につながるとの理念のもと、持続可能で人に優しい事業展開を目指します。
「ヘルケア」特定保健用食品(サプリメント)事業
概要
エーザイの「ヘルケア」は、血圧が高めの方を主な対象に開発された特定保健用食品(トクホ)です。商品は「ヘルケア 4粒×30袋入」で、毎日の健康管理と生活習慣改善を支えることを目的としています。
成分と特徴
主な特徴はイワシペプチドの配合です。イワシ由来のペプチドは、食品として取り入れやすい成分で、サプリメント形状にすることで続けやすくしています。トクホ認定を受けている点が消費者の信頼につながっています。
期待される利用者
血圧がやや高めで生活習慣を見直したい方や、薬に頼る前にまず食品で調整したい方に向いています。日々の食事や運動と組み合わせて利用することで、健康管理の一助になります。
消費者の声と信頼性
利用者のレビューには血圧の改善を実感したという例も報告されています。また、薬剤師がおすすめするサプリメントとして紹介されることがあり、専門家からの支持も得ています。
使い方のポイントと注意点
パッケージの表示に従い、継続して摂取することが大切です。既に治療中の方は、医師や薬剤師に相談のうえ利用してください。食品であっても体調に変化があれば中止し、専門家に相談してください。
認知症予防・啓発への取り組み
背景と目的
高齢化の進展に伴い、認知症は社会全体で取り組む課題になっています。エーザイはこの領域に強みを持ち、予防と共生の両面から支援することを目指しています。わかりやすい情報提供と日常で続けられる取組みを通じて、本人・家族・地域の負担軽減に貢献します。
dヘルスケアアプリとの連携
NTTドコモの「dヘルスケア」アプリと連携し、認知症に関する基本情報(症状・診断・治療・備え)を提供します。アプリ内では認知機能維持・向上のトレーニングコースや解説コラムを配信し、利用者が自分のペースで学べる仕組みを整えています。
提供するコンテンツ(例)
- 簡単な記憶・注意力トレーニング(例:数字や言葉を使った短時間の課題)
- 生活習慣アドバイス(睡眠・運動・栄養・社会参加のヒント)
- 早期受診を促すチェックリストや受診時の準備情報
- ケアする家族向けのコラムや相談窓口案内
利用者支援と地域連携
個人向けの進捗記録や通知機能で継続を支援します。必要に応じて医療機関や地域団体と連携し、講座やワークショップを実施することで地域全体で支える体制づくりを進めます。
目指すエコシステム
認知症の理解を広げ、予防と共生が当たり前になるエコシステムを構築します。個人の行動支援と地域ネットワークの両輪で、高齢化社会の課題解決に寄与することを目指しています。
フレイル(虚弱)予防への実証事業
概要
エーザイは豊田市など自治体と連携し、健診データなどからフレイルのハイリスク者を抽出して予防介入を行っています。目的は口腔機能や食生活の改善、運動習慣の定着です。
対象者抽出と評価
健診結果や問診でフレイル予備群を特定し、握力や歩行速度、咀嚼・嚥下の簡易検査、食事アンケートでベースラインを取ります。これにより個々に応じた介入計画を作成します。
介入プログラムの内容
- 口腔:嚙む練習、舌体操、歯科・口腔ケア指導
- 食事:栄養指導、たんぱく質を意識した献立、食事記録の支援
- 運動:筋力トレーニング、バランス運動、集団教室と在宅プログラム
- 支援:アプリや電話による継続支援と遠隔相談
実証と解析
3〜12か月の追跡で握力・歩行速度・口腔機能スコア・栄養摂取量などを評価します。統計解析で介入群の改善を確認し、効果のある介入要素を抽出します。
社会実装と展望
「あいちデジタルヘルスプロジェクト」採択により、自治体・企業連携で新サービス化と地域展開を進めています。参加者の継続支援や多職種連携を強化し、地域包括ケアへの組み込みを目指します。
社会善の実現とグローバルヘルス活動
概要
エーザイは認知症領域だけでなく、顧みられない熱帯病などのグローバルヘルス課題にも積極的に取り組んでいます。治療薬の無償提供や現地での支援を通じて、医療アクセスの公平性や社会的インパクトの創出をめざします。
主な取り組み
- 治療薬の無償提供:現地ニーズに応じて医薬品を無償で供給し、治療を受けられない人々の命を守ります。
- 研究・開発支援:現地の医療機関や研究者と連携し、治療法や診断法の改良を支援します。
- 医療体制の強化:医療従事者の研修や啓発活動を行い、持続的にケアを提供できる体制を育てます。
パートナーシップと地域貢献
NGOや公的機関、学術機関と協働し、物流・供給・教育を統合します。現地の声を重視し、文化や制度に合わせた支援を展開します。
インパクトの評価と今後
提供数や治療到達率などの指標で効果を測り、学びを次の活動に反映します。より多くの人に持続的な医療を届けるため、連携を広げていきます。
IT・デジタルとヘルスケアの融合
概要
AIクラウドやコンサルティングを活用し、健康管理のデジタル化と業務効率化を進めています。データをつなげ、見やすくすることで、予防や早期対応を実現します。
具体的な取り組み例
- ウェアラブルやスマホで日々の活動や睡眠を取得し、クラウドで解析して異変を早期に検知します。たとえば歩数や心拍の変化を通知し、生活改善のアドバイスを届けます。
- 医療機関向けには検査結果や診療記録を統合するダッシュボードを提供し、診療の迅速化と情報共有を支援します。
- 企業向けには従業員の健康データを匿名化して集計し、職場の健康対策や産業保健の計画に役立てます。
- コンサルティングでは業務フローの見直しやデジタルツール導入、現場研修まで一貫して支援します。
導入で期待できる効果
- 早期発見と予防が進み、重症化を抑えられます。医療・介護の負担軽減につながります。
- 書類作業や重複入力が減り、現場の時間を創出します。
- 個人に合った健康支援でモチベーションが上がり、継続につながります。
留意点
- 個人情報は同意と適切な管理が最優先です。匿名化やアクセス制限を徹底します。
- 機器やシステムの相互接続(標準化)を進め、現場の負担を増やさない設計が大切です。
実装の進め方
まず小さなパイロットで効果を検証し、現場の声を取り入れて拡大します。人に寄り添う設計と継続的な改善で、デジタル化の恩恵を現実にします。
企業カルチャー・人的資本経営
概要
エーザイはhhc(human health care)理念を軸に、人を大切にする企業文化を育てています。人材は事業の基盤であり、健康を支える人的資本の強化に力を入れています。
hhc理念と統合人事戦略
hhc理念を日常業務に結びつけるため、採用・育成・評価を一体で設計しています。例えば、現場での学びを重視するOJTや、社内公募で多様な経験を積める仕組みを整えています。
グローバル人事戦略
海外拠点との人材交流やリーダー育成プログラムを通じて、国を越えた知見共有を進めています。現地事情に応じた柔軟な配置で、各国の強みを引き出します。
人的資本経営と健康支援
従業員の健康が事業成果に直結するという考えで、予防的な健康施策を行います。定期検診の充実、メンタルヘルス支援、働き方の選択肢拡大などを実施しています。
具体的施策と事例
フレックスやテレワーク、育児・介護支援制度の整備で多様な働き方を実現しています。研修では認知症や高齢者ケアの理解を深め、製品開発や営業に生かしています。
測定と評価
エンゲージメント調査、離職率、健康指標を定期的に確認し、データをもとに改善を進めます。人的資本の価値を数値で可視化して経営に結びつけます。
企業文化の醸成
対話の場を増やし、失敗を学びに変える風土を作っています。多様性を尊重し、一人ひとりが健康で力を発揮できる職場を目指しています。