はじめに
更年期は多くの女性が経験する人生の一段階で、体や心にさまざまな変化が現れます。本記事では、更年期に増えやすい高血圧について、原因や特徴をわかりやすく解説します。また、東洋医学の視点から行うセルフケアとして、ツボ押しや鍼灸の基本的な考え方と具体的な方法、日常で取り入れやすい生活習慣や補助療法も紹介します。
目的:
- 更年期と高血圧の関係を理解する
- 自宅でできる安全なセルフケアを学ぶ
- 医療機関を受診すべき目安を知る
想定読者:
- 更年期に差し掛かった女性
- 血圧の変動が気になる方
- 東洋医学のセルフケアに興味がある方
注意点:
本記事で紹介するセルフケアは補助的な方法です。高血圧の診断や治療は医師の判断が第一です。症状や数値に不安がある場合は、早めに専門医に相談してください。
更年期に高血圧が増える理由
更年期になると、体の中で大きな変化が起こり、高血圧になりやすくなります。ここでは主な理由を分かりやすく説明します。
1. 女性ホルモン(エストロゲン)の減少
エストロゲンは血管を柔らかく保つ働きがあります。更年期でエストロゲンが急に減ると、血管が固くなりやすくなります。イメージとしては、しなやかな風船が少し硬くなるような変化です。血管が硬いと血圧が上がりやすくなります。
2. 自律神経のバランスが崩れる
更年期は自律神経が乱れ、交感神経が優位になりやすくなります。交感神経が強く働くと血管が収縮して血圧が上がります。例えば、ホットフラッシュ(のぼせ)や急な不安で一時的に血圧が跳ね上がることがあります。
3. 加齢と生活の影響
年齢とともに血管は老化します。さらに体重増加や運動不足、塩分に敏感になるなど日常の変化も重なり、血圧が上がりやすくなります。
以上が、更年期に高血圧が増える主な理由です。次章で更年期高血圧の特徴や気づき方を詳しく見ていきます。
更年期高血圧の特徴・症状
特徴
更年期に起きる高血圧は、一日中ずっと高い状態が続くわけではなく、血圧が上がったり下がったりを繰り返すのが特徴です。閉経前後の女性ホルモンの変化や自律神経の乱れが影響して、一過性に血圧が急上昇することがあります。
よく見られる症状
- 動悸:急に心臓がドキドキする。階段を上がったときではなく安静時に起きることもあります。
- ほてり・ホットフラッシュ:顔や首が熱くなり汗が出る。
- めまい、ふらつき:立ち上がったときや急な血圧変動で感じる。
- 頭痛、肩こり:締め付けられるような痛みが一時的に起きる。
- 冷えや息切れ:部位によって感じ方が異なります。
症状の出方と誘因
症状は数分から数時間で治まる場合が多いです。ストレス、過度の飲酒・カフェイン、入浴や激しい運動、睡眠不足で起きやすくなります。
放置するとどうなるか
繰り返す高血圧は脳卒中や心疾患のリスクを高めます。症状が頻繁、重い、あるいは意識が遠のくような場合は早めに医療機関を受診してください。自宅で血圧を記録しておくと医師に伝えやすくなります。
更年期高血圧に役立つツボとセルフケア
概要
東洋医学では自律神経のバランスを整え、血流を改善し、腎の働きを助けることで更年期の不調や高血圧をやわらげます。毎日続けるセルフケアが大切です。
主なツボと簡単な押し方
- 委中(いちゅう): ひざ裏の中央。親指でゆっくり押し、痛気持ちいい圧で30秒程度。血流改善に役立ちます。
- 承山(しょうざん): ふくらはぎの中央のくぼみ。むくみや血流の巡りを助けます。
- 合谷(ごうこく): 手の甲、親指と人差し指の骨の間。自律神経を落ち着けやすいツボです。
- 太渓(たいけい): 内くるぶしの後ろ、アキレス腱の近く。腎の働きを助けるとされます。
- 労宮(ろうきゅう): 手のひらの中央、握ったときに中指が当たる場所。リラックスに有効です。
- 神門(しんもん): 手首の内側、小指側のしわの先。不安感をやわらげます。
- 湧泉(ゆうせん): 足の裏のやや前方のへこみ。全身のエネルギーを整えるとされます。
行い方のポイント
- タイミング: お風呂上がりや寝る前などリラックス時に行ってください。
- 回数: 1点につき片側10〜20回、1日1〜2回が目安です。指先で円を描くように押すと痛みが出にくいです。
- 呼吸をゆっくり吐きながら押すと効果が高まります。
- お灸は補助的に使えますが、やけどに注意し短時間にしてください。
注意点
- 皮膚に傷がある場所や炎症のある部位は避けてください。
- 痛みが強い場合や体調悪化が続くときは医療機関を受診してください。
ツボ押し以外のセルフケア・補助療法
運動で血流と自律神経を整える
日常で続けやすい運動は更年期の高血圧に役立ちます。具体的にはスクワット、かかと上げ、片足立ち、ふくらはぎのマッサージなどです。これらは下肢の筋肉を動かして血流を促し、心臓への負担を和らげます。また軽い有酸素運動(速歩きや自転車)も自律神経のバランスに良い影響を与えます。
やり方と注意点
- スクワット:椅子に座る感覚でゆっくり10回を1セット、1日2〜3セット。膝を痛めないよう深く曲げすぎないでください。
- かかと上げ:壁や椅子をつかんでゆっくり20回。ふくらはぎを意識します。
- 片足立ち:バランス訓練に効果的。左右30秒ずつを目安に。転倒に注意して手すりを使ってください。
- ふくらはぎマッサージ:下から上へ軽くさするように1〜2分。
無理に息を止めないよう呼吸を続け、痛みが出たら中止します。
漢方薬の使い方(補助的)
体質に応じて漢方が処方されることがあります。加味逍遥散はイライラやのぼせに、八味地黄丸は冷えや腰足のだるさに合う場合があります。ただし自己判断で始めず、医師や漢方専門医に相談してください。薬の相互作用や副作用が出ることがあります。
鍼灸治療
鍼灸は副交感神経を高め、リラックス効果で血圧の変動を抑える助けになります。週1回程度から始め、効果を見ながら回数を調整します。施術は国家資格を持つ施術者に受け、出血傾向や感染症、抗凝固薬を服用している場合は事前に伝えてください。
日常生活の補助法
規則正しい睡眠、適度な塩分・アルコール制限、体重管理、深呼吸や簡単な瞑想などで自律神経を整えます。血圧は朝晩に記録して変化を確認してください。
受診の目安
セルフケアを続けても血圧が高い、頭痛・めまい・息切れが強い場合は早めに医療機関を受診してください。薬の調整や詳しい検査が必要になることがあります。
注意点・医療機関の受診の目安
はじめに
ツボ押しやセルフケアは日常の補助です。動悸やめまい、頭痛などの症状が頻繁に出る場合や血圧が高い状態が続く場合は、必ず医師に相談してください。
受診の目安(目安となる症状・数値)
- 家庭で測って収縮期(上の血圧)が140以上、または拡張期(下の血圧)が90以上が続くとき
- 頻繁に動悸、めまい、ふらつき、強い頭痛、息苦しさを感じるとき
- 立ち上がると急にくらっとする、失神したことがあるとき
緊急に受診すべきサイン(救急を要することがあります)
- 激しい頭痛や意識障害、ろれつが回らない、片側の麻痺やしびれが出たとき
- 胸の強い痛みや息苦しさ、急な視力低下があるとき
受診前に準備しておくこと
- 家庭血圧の記録(日時と値)
- 現在の服薬一覧(市販薬・サプリも)
- 症状が起きる状況や頻度のメモ(いつ、何をしていたか)
- 月経や更年期症状、ホルモン薬の使用歴
医師との話し方のポイント
- いつから、どんなときに症状が出るかを具体的に伝えてください。薬の副作用やめまいで薬を自己判断で止めないでください。医師は検査や生活指導、薬の調整を提案します。
定期受診の目安
- 新しく高血圧と診断された場合や薬を変えた直後は、短い間隔での受診が必要です。症状が安定していれば、医師と相談して3〜6か月ごとのチェックが一般的です。
不安なときは早めに相談してください。適切な診断と治療で日常生活の負担を減らせます。