高血圧予防と血圧管理

男性更年期障害が血圧に与える影響を詳しく解説

はじめに

本書は、男性更年期障害と血圧上昇の関係をわかりやすくまとめたものです。男性ホルモン(テストステロン)の低下が、なぜ血圧や循環器の病気と結びつくのか、メカニズムや起こりやすい症状、診断・治療、日常でできる対策までを順を追って解説します。

目的

  • 男性自身やその家族、医療に関心のある方が、問題を早めに見つけ対応できるようにすることを目指します。

どのように読むか

  • 専門用語はできるだけ控え、具体例で補足します。たとえば「疲れやすさ」や「朝のだるさ」「性的な変化」など身近なサインを例に挙げます。

本書の構成

  • 第2章以降で原因や仕組み、症状、リスク、診断・治療、生活改善の方法を順に説明します。読み進めることで、何をチェックし医療に相談すべきかがわかるようになります。

男性更年期障害とは

概要

男性にも更年期にあたる変化があり、医学的には「加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)」と呼びます。男性ホルモン(テストステロン)が年齢とともにゆっくり減り、40代以降に症状が出やすくなります。日常生活で「最近疲れやすい」「気分が落ち込みやすい」と感じる場合、この変化が関係していることがあります。

テストステロンの働き(簡単に)

テストステロンは筋肉や骨を保つ、性欲を支える、気分や集中力にも関係するホルモンです。分泌が減ると、力が入りにくい、やる気が出ないといった変化が現れます。たとえば、以前はできていた階段の上り下りがつらく感じる、仕事で集中が続かないなどです。

主な症状(具体例で)

  • 疲れやすくなった、すぐ眠くなる
  • 気分が落ち込みやすい、イライラする
  • 性欲の低下や勃起の変化
  • 筋力低下や体脂肪の増加
    これらは他の病気や生活習慣でも起きます。重なるとLOHが疑われます。

誰がなりやすいか

加齢に加えて、肥満、運動不足、睡眠不足、糖尿病や慢性疾患がある人はなりやすい傾向があります。

受診の目安

症状が続く、生活に支障が出る場合は早めに受診してください。簡単な問診と血液検査でテストステロンの値を確認します。治療や生活改善の選択肢については専門医と相談することが大切です。

男性ホルモン低下による血圧上昇のメカニズム

概要

テストステロンが減ると、体のストレス反応や自律神経のバランスが崩れ、結果として血圧が上がりやすくなります。ここでは分かりやすく段階ごとに説明します。

コルチゾールの過剰分泌と影響

テストステロンが低下すると、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が増えやすくなります。コルチゾールは血糖を上げ、血管を収縮させる作用もあるため、血圧上昇を招きます。またコルチゾールは腎臓での水分・塩分保持を促し、体の循環量を増やして血圧を高めます。例えば、寝不足や精神的ストレスが続くと血圧が上がる経験がある人も多いでしょう。

自律神経の乱れ(交感神経優位)

テストステロン低下は自律神経のバランスを乱し、交感神経が優位になります。交感神経は心拍数を上げ、血管を収縮させるため、短期的にも血圧を押し上げます。日中に緊張しやすく、夜に眠りが浅くなるとこの傾向が強まります。

血管・腎臓への具体的影響

テストステロンは血管をやわらげる働きにも関係します。低下すると血管内の一酸化窒素(血管を広げる物質)の働きが弱まり、血管抵抗が増えます。さらに腎臓でのナトリウム(塩分)処理が変わり、塩分に敏感になって血圧が上がりやすくなります。

日常で気をつけること

十分な睡眠、適度な運動、塩分の摂りすぎを控えることが基本です。気になる症状があれば早めに医療機関で相談することをおすすめします。

血管老化と動脈硬化の進行

内臓脂肪の増加と炎症

テストステロンが低下すると、特にお腹まわりの内臓脂肪が増えやすくなります。内臓脂肪は単に見た目を変えるだけでなく、炎症性の物質を出して血管にダメージを与えます。これが血管の老化を早める一因になります。

脂質代謝の乱れ

男性ホルモンの低下は中性脂肪やコレステロールの代謝を悪化させます。具体的には、トリグリセリド(中性脂肪)が増え、LDL(悪玉コレステロール)が高くなり、HDL(善玉)が低くなることが多いです。これにより血管壁に脂がたまり、やがてプラーク(こぶ)になって動脈硬化が進行します。

血管の硬化と高血圧

血管壁が厚く硬くなると、血液が流れにくくなり血圧が上がります。血管の弾力が失われることで心臓はより強く血を押し出す必要があり、結果として高血圧を招きます。血管内皮の機能低下も動脈硬化を促します。

メタボリックシンドロームへの連鎖と予防

内臓脂肪増加、脂質異常、高血糖、高血圧が組み合わさるとメタボリックシンドロームになります。早めに体重や食事、運動を見直すことで進行を遅らせられます。定期的な健康診断で脂質や血糖、血圧をチェックすることが大切です。

男性更年期による具体的身体症状

概要

男性更年期では、体の不調があちこちに現れます。多くはホルモンの変化に伴うもので、日常生活に支障を感じることがあります。

主な身体症状

  • 疲労感・だるさ:朝起きても疲れが取れない、仕事の集中力が落ちる例が多いです。短時間の休息でも回復しにくいことがあります。
  • 筋力低下・体重変化:筋肉が落ちて体が重く感じたり、運動量が減って体重が増えることがあります。階段の上り下りで息切れする例もあります。
  • 動悸・高血圧との関係:脈が早くなったりどきどきする感覚が出ます。特に高血圧がある人は動悸を強く感じることがあるため、血圧を測る習慣が大切です。
  • 発汗・ほてり:急に汗が出たり顔や首がほてることがあります。暑さや緊張で悪化することが多いです。
  • 睡眠障害:眠りが浅く夜中に目が覚める、日中に強い眠気を感じる人がいます。
  • 性機能の変化:性欲の低下や勃起の不調を訴える方がいます。年齢だけでなくホルモン低下が関係することが多いです。

症状が強いときの目安と受診先

  • 動悸や胸の痛み、めまいが強ければすぐ内科受診を勧めます。
  • 性機能の悩みは泌尿器科や専門外来で相談してください。
  • 長引く倦怠感や睡眠障害は内科や心療内科での評価が役立ちます。

日常でできる対処法

  • 家で血圧を測る習慣をつける。変動が大きければ受診を。
  • 定期的な軽い運動(散歩や体操)で筋力と気分を保つ。
  • 規則正しい睡眠習慣と休養を重視する。
  • 気になる症状は早めに医療機関で相談し、必要なら検査や治療を受けることが安心です。

脳梗塞などの重大な健康リスク

血圧上昇が招く危険

中高年で男性ホルモンが低下すると血圧が上がりやすくなります。血圧が高い状態を続けると、血管の内側にコレステロールや老廃物がたまりやすくなり、血管は硬く細くなります(動脈硬化)。この変化で血液の流れが悪くなり、脳の血管が詰まれば脳梗塞、心臓の血管が詰まれば心筋梗塞を起こします。脳梗塞は手足の麻痺、言葉が出にくい、視野の欠損などの症状を急に引き起こします。胸の痛みや息切れは心筋梗塞の典型的なサインです。これらは命に関わるため早期対応が重要です。

糖尿病・認知症・排尿障害への影響

高血圧は糖代謝にも悪影響を与え、糖尿病を招きやすくなります。糖尿病と動脈硬化が重なると、認知機能の低下も進みやすくなります。加えて、前立腺や骨盤周りの血流や神経が障害されると排尿のトラブル(頻尿、残尿感、尿が出にくい)を招くことがあります。これらの症状は日常生活の質を大きく下げます。

どうすればリスクを下げられるか

血圧を放置せず、定期的に測ることが第一歩です。異常があれば医師に相談し、生活習慣の改善や降圧薬の使用で管理します。体調に急変(顔や手足のしびれ、言葉が出ない、激しい胸の痛みなど)があれば直ちに救急を呼んでください。早めの対策で重大な合併症を防げます。

診断と治療の重要性

診察を受ける目安

疲労感や動悸、性欲の低下、勃起不全、気分の落ち込み、集中力の低下などが続く場合は受診をおすすめします。日常生活に支障が出るほどの症状や、めまい・胸痛・息切れなどがある場合は早めに医療機関を受診してください。例えば、階段を上がるだけで息切れがひどくなったら受診のサインです。

検査と診断の流れ

まずは問診と身体診察を行います。血液検査で総テストステロン値や血糖、脂質、肝機能、腎機能を調べます。必要に応じて甲状腺ホルモンや睡眠時無呼吸の検査を行うこともあります。診断は症状と血中ホルモン値を総合して行います。検査は朝の時間帯に採血することが一般的です。

治療の選択肢

主な治療は男性ホルモン補充療法(テストステロン補充)です。70~80%の方に症状改善が期待できます。投与方法には皮膚に塗るジェル、貼るパッチ、筋肉注射、経口薬などがあります。例えば、ジェルは肩や腕に塗るだけで続けやすい利点があります。

効果と注意点

ホルモン補充で体力や気分、性機能が向上することが多いです。ただし、赤血球の増加(血が濃くなる)、前立腺の変化、体重増加やむくみなどの副作用が起こることがあります。治療中は血液検査(ヘマトクリット、PSAなど)や血圧のチェックを定期的に行います。既往症や服薬との兼ね合いで適さない場合もあるため、医師とよく相談してください。

継続的なフォローの重要性

治療は一度始めたら定期的な評価が必要です。症状の改善度や検査値を見ながら投与量や方法を調整します。治療中に息苦しさや強い頭痛、急な視力障害などが現れたら速やかに医療機関に連絡してください。

相談先と意思決定

内科、泌尿器科、男性更年期専門の外来などで相談できます。治療のメリットとリスクを分かりやすく説明してもらい、自分の生活や希望に合う方法を選びましょう。ライフスタイル改善と組み合わせることで、より良い結果が期待できます。

生活習慣の改善の重要性

ストレス管理

慢性的なストレスはコルチゾールというホルモンを増やし、男性ホルモン(テストステロン)を下げます。仕事の合間に深呼吸を1分間行う、昼休みに軽い散歩をするなど、短時間でできる方法を習慣にしてください。趣味や友人との会話も効果的です。

睡眠の質を上げる

毎日同じ時間に寝起きする、スマホや強い光を就寝1時間前に避ける、寝室を暗くして静かにすることが大切です。睡眠が不足すると血圧やホルモンバランスが崩れます。目安は7時間前後です。

運動習慣の定着

週に合計150分の有酸素運動(早歩きや軽いジョギング)を目標にしてください。筋力低下を防ぐために週2回ほどの筋トレ(腕立て、スクワット、ダンベル)を取り入れるとテストステロン維持に役立ちます。

食事と飲み物の工夫

塩分の過剰摂取を控え、たんぱく質と野菜をバランスよくとると血圧管理に有利です。GABA茶や発酵食品、マグネシウムを含む食品(ほうれん草、ナッツ)は交感神経を落ち着ける助けになります。アルコールや深夜の食事は控えめに。

日常で続けるコツと医療との併用

小さな目標を立てて徐々に習慣化してください。体重・血圧を家庭で測り変化を記録するとモチベーションが続きます。生活改善で改善しない場合は医師に相談し、必要があれば専門的な治療を検討してください。

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