目次
はじめに
目的
本資料は、高血圧の方やそのご家族、医療に不安のある方に向けて、塩分と高血圧の関係や、実際に役立つ減塩の方法を分かりやすくまとめたものです。最新の国内外のガイドラインや日本人の現状、具体的な実践法まで網羅的に扱います。
対象
・高血圧と診断された方
・血圧が気になる方
・家族の食事をサポートする方
専門用語はできるだけ避け、日常の食事で使える具体例を中心に説明します。
本資料の使い方
各章は独立して読めますが、順に読むと理解が深まります。第2章で基礎を学び、第3章で目安を確認、第4章で現状を知り、第5章で実践法を学びます。必要があれば、医師や栄養士に相談してください。
注意点
個人差があります。ここで示す目安や方法は一般的な情報です。症状や合併症がある場合は、必ず医師の指示に従ってください。
高血圧と塩分の関係
塩分が血圧を上げる仕組み
塩分(ナトリウム)を多く摂ると、体は血液中のナトリウム濃度を下げようと水分を取り込みます。その結果、血液の量が増え血管にかかる圧力が高まります。さらに体内ではホルモンが働き、腎臓が塩分と水分をため込みやすくなったり、血管が収縮したりして血圧が上がります。簡単に言うと「塩分→水分増加→血圧上昇」という流れです。
影響を受けやすい人
年齢が高い人、家族に高血圧がある人、肥満や糖尿病がある人は塩分の影響を受けやすいです。人によっては少しの塩分増加でも血圧が上がる「塩分感受性」があります。自分が当てはまるかは、医師の診察で分かることがあります。
健康へのリスク
高血圧が続くと脳卒中や心臓病、腎臓病のリスクが高まります。塩分を減らすだけで血圧が下がり、これらの病気の予防につながる研究結果が多数あります。
日常での具体例と注意点
味噌汁、漬物、加工食品、インスタント食品、しょうゆやソースは塩分が多いです。調理ではだしや酢、レモン、香草を使うと塩を減らせます。食品の表示にある「食塩相当量」を確認し、低ナトリウム製品を選んでください。缶詰や加工品は流水で洗うと塩分を減らせます。少しの減塩でも効果がありますので、無理なく続けることを心がけてください。
高血圧患者の塩分摂取量の目安
目標量
日本高血圧学会は、高血圧の方について1日あたりの塩分摂取量を6g未満と強く推奨しています。簡単に言えば「小さじ約1杯」に相当します。目標を意識することで、血圧の管理に役立ちます。
他の基準との比較
世界保健機関(WHO)は5g未満を推奨していますが、日本のガイドラインでは6g未満が一般的な目安です。厚生労働省の一般成人の基準は男性7.5g未満、女性6.5g未満ですが、高血圧の方にはより厳しい6g未満を目指します。
食事ごとの目安と具体例
1日の目標を3回の食事で分けると、1食あたり約2g以下を目安にできます。具体例としては、味噌汁や漬物、醤油のかけすぎを控えることが有効です。加工食品は塩分が多いことがあるので、表示の「食塩相当量」を確認してください。
実践のヒント
・外食では味薄めを注文する。
・調味料は計量して使う(目安:小さじで計る)。
・だしや酢、香味野菜で味に変化をつける。
高血圧の方は個々の状態によって必要な目標が変わりますから、医師や専門家と相談して具体的な数値を決めることをおすすめします。
現状の日本人の塩分摂取量
現状の数値
令和元年の国民健康・栄養調査では、日本人の平均的な塩分摂取量は男性で約10g/日、女性で約9g/日と報告されています。これは多くの減塩目標を大きく上回る数値です。多くの人が目標を達成できていないため、日常的な意識の向上が求められます。
塩分の主な摂取源
普段の食事で塩分が多くなる代表例を挙げます。
- 味噌汁:1杯で約1〜2g程度の塩分が含まれることが多いです。
- しょうゆやみりんで味付けした料理:調味料で簡単に塩分が増えます。
- インスタント食品や加工食品:1食で数グラムの塩分になることがあり、注意が必要です。
- 漬物、缶詰、外食の定食類:見た目より塩分が高くなる場合があります。
人による違いと注意点
年齢や食習慣、外食の頻度によって摂取量は変わります。毎日の味付けや間食、調味料の量を見直すだけで、塩分は確実に減らせます。自分の食生活を振り返り、ラベル表示やメニューの塩分表示を確認する習慣をつけるとよいでしょう。
なぜ一般の人も意識が必要か
高血圧の人だけでなく、将来のリスクを下げるために、一般の人も減塩を心がけるべきです。まずは身近な食品の塩分を知り、少しずつ工夫を取り入れていくことをおすすめします。
減塩のポイントと実践方法
高血圧対策として減塩は大切です。無理なく続けられる具体的な工夫をわかりやすく紹介します。
食品を選ぶときのポイント
- 成分表示で「食塩相当量」を確認しましょう。カップ麺や加工ハムは塩分が高いことが多いです。
- 漬物や味噌、缶詰の汁なども塩分が集中しています。量を控えめにします。
調理での工夫
- だし(昆布、かつお、煮干し)を使うと少ない塩でもうま味が出ます。
- 香辛料やハーブ(しょうが、にんにく、こしょう、パセリ、バジル)で風味を付けます。
- 酢や柑橘類(レモン、すだち)を使うと味が締まります。
- 仕上げの塩は少量にして、まず味見をしてから加えます。
外食や惣菜での工夫
- 注文時に「薄味で」「タレ・ソース少なめで」と伝えましょう。
- ソースやドレッシングは別添えにして量を調節します。
- 汁物を半分残す、または最初から具だくさんにして汁を減らすのも有効です。
日常の習慣を見直す
- 食卓の塩容器を置かない、卓上調味料を減らす習慣をつけます。
- 少しずつ味を薄くすることを続ければ、無理なく慣れます。
- 減塩商品の活用は便利ですが、表示を確認して使いすぎに注意します。
加工食品の扱い方
- ハム・ソーセージ、インスタント食品、調味済み冷凍食品は頻度を減らします。
- 一食あたりの塩分を計算して、他の食事で調整します。
継続のコツ
- 家族と一緒に減塩することで続けやすくなります。
- 塩分を完全に排除する必要はありません。日々の積み重ねで負担なく減らすことが重要です。
まとめと医師や専門家との相談の重要性
要点のまとめ
- 高血圧や心血管リスクを下げるために、1日あたりの塩分を6g未満に抑えることが推奨されます。無理なく続けることが大切です。
相談することの利点
- 医師は薬の調整や血圧の管理方針を判断します。管理栄養士は具体的な献立や買い物のコツを示してくれます。
相談で聞くべき具体例
- 自分に合った1日の塩分目標はどれくらいか
- 日常の食事で注意すべき食品や調味料の例
- 家での血圧測定の頻度と記録方法
- 服薬中の注意点や副作用の見分け方
実践のコツ(医師と一緒に使える方法)
- 小さな目標を設定して段階的に減塩する
- 食品ラベルを確認して低塩の商品を選ぶ
- うま味調味料やハーブで味に変化をつける
- 家族と協力して食習慣を整える
いつ受診すべきか
- 家庭での血圧が急に高くなったり、めまいや胸の違和感があるときはすぐ受診してください。
最後に、変化は時間がかかります。医師や管理栄養士と相談しながら、自分に合った無理のない方法で続けていきましょう。定期的な相談が安全で確実な減塩につながります。