高血圧予防と血圧管理

高血圧対策に欠かせないカリウム摂取量の重要ポイント

はじめに

本資料の目的

本資料は、高血圧の予防・改善に役立つ「カリウムの摂取」とその実践法をわかりやすく解説します。専門的な研究を日常の食事に活かせるよう、具体的な食品や調理の工夫まで丁寧に説明します。

対象となる方

・血圧が気になる方
・塩分を減らしたい方
・食事で健康を管理したい方

本書で学べること(全7章の概要)

  1. はじめに(本章)
  2. カリウムの摂取目標量
  3. ナトリウムとカリウムの体での働き
  4. ナトカリ比という評価指標
  5. カリウムを多く含む食品と摂り方
  6. ナトリウムを減らす具体的工夫
  7. 摂取時の注意点と医師への相談

読み方のポイント

実践編(第5章・第6章)から読んで、日々の食事に取り入れてください。腎臓疾患や降圧薬を服用中の方は、必ず担当医に相談してから食事を変えてください。

カリウムの摂取目標量

推奨される量

日本では、成人のカリウム摂取目標量を男性で1日3,000mg以上、女性で1日2,600mg以上としています。血圧の管理や心臓の健康を守るための目安です。

現状と不足の程度

国民の平均摂取量は男性が約2,439mg、女性が約2,273mgで、目標値に届いていません。換算すると男性は約560mg、女性は約330mgほど不足しています。これが高血圧予防には不十分な理由です。

身近な食品でどのくらいか

例として、バナナ1本で約350〜400mg、納豆1パックで約300〜400mg、じゃがいも中1個で約600〜800mg、ほうれん草の煮物1回分で約300〜400mgのカリウムが摂れます。これらを組み合わせると目標に近づけます。

増やすときのポイント

・野菜や果物、豆類、イモ類を毎食に取り入れてください。
・茹でるとカリウムが水に出やすいので、スープや煮物の汁も利用すると無駄が減ります。
・加工食品に頼りすぎるとナトリウム過多になりがちなので、できるだけ素材中心の料理を心がけましょう。

ナトリウムとカリウムの生理的作用

ナトリウムのはたらき

ナトリウムは体内の水分を保持し、血液量を増やして血圧を上げる働きがあります。食塩(塩化ナトリウム)に多く含まれ、加工食品や外食で摂りすぎになりやすいです。過剰なナトリウムはむくみや高血圧の原因になります。

カリウムのはたらき

カリウムは細胞内に多くあり、筋肉や心臓の動きを助けます。ナトリウムの体内取り込みを抑え、尿へ排出するのを促すため、血圧を下げる方向に作用します。果物や野菜、豆類に多く含まれ、バナナやほうれん草などが代表例です。

両者の相互作用と血圧への影響

ナトリウムとカリウムはバランスが大切です。ナトリウムが多いと血圧は上がりやすく、カリウムを十分に摂るとその影響を和らげます。臨床ではこの関係を重視しており、カリウム摂取の増加が高血圧リスクを下げることが示されています。

臨床的指針の一例

欧州心臓病学会のガイドラインでも、カリウムの適正な摂取は血圧管理に有益とされています。日常ではナトリウムを控えめにし、野菜や果物でカリウムを補うことが実践的です。

ナトカリ比という新しい評価指標

ナトカリ比とは

ナトカリ比は尿中のナトリウム(Na)とカリウム(K)の比率です。簡単に言うと、尿に出る塩分とカリウムの割合をみる指標で、比が大きいほど塩分に偏っていることを示します。

なぜ注目されるのか

研究では、この比率が高いほど高血圧や心血管疾患のリスクが上がると分かってきました。単独の塩分量やカリウム量より、比を見るほうが血圧との関係が強いという特徴があります。

目標値と日常の目安

一般的な目安は、尿中Na/K比を1以下にすることです。食事面では、塩分(ナトリウム)を抑えつつ、カリウムを積極的に摂ることが大切です。具体例としては、塩分は1日およそ2g(食塩約5g)を目安に、カリウムは1日約3,500mgを目標とすると良いとされています。

実践的な工夫

・カリウムが多い食品:バナナ、ほうれん草、じゃがいも、納豆、豆類などを毎日の献立に取り入れてください。
・塩分を減らす:加工食品や外食を控え、だしや酢、香辛料で味を整えると効果的です。
・簡単なチェック:市販の尿検査紙や医療機関の検査で比率を確認できます。自分の数値を知ると行動しやすくなります。

注意点

腎臓病や一部の薬を服用している方は、カリウムを多く摂ると危険な場合があります。検査や食事変更は医師と相談してください。

カリウムを効果的に摂取する食事法

ポイント

カリウム摂取の基本はシンプルです。毎食に野菜料理を1品以上加え、果物を1日約200gを目安に摂ります。野菜ジュースを1杯取り入れると手軽に補えます。豆類、芋類、乳製品、魚介もカリウム源です。

具体的な工夫例

  • 醤油ラーメン:ほうれん草やニラをたっぷりのせ、仕上げに無塩の野菜ジュースを少量かけると、ナトリウムに対してカリウムが上回りやすくなります。
  • 朝食:ヨーグルトにバナナとカットフルーツをのせる。トーストにアボカドを添える。
  • 間食:干し柿やナッツ、豆乳スムージー。

調理のコツ

  • じゃがいもやにんじんは皮ごと使うとカリウムが増えます。
  • 蒸す・炒めるなど短時間加熱で栄養を残します。
  • 塩分を控えたいときは、レモンや酢、香味野菜で風味を出します。

献立の組み立て方

毎食に「主菜(魚・豆)+副菜(葉物)+果物または野菜ジュース」を組み合わせます。外食時はサラダや蒸し野菜を付け加えるだけで効果的です。

注意点

腎臓の病気などでカリウム制限がある方は、増やす前に医師や管理栄養士に相談してください。

ナトリウムを減らす工夫

減塩の基本

高血圧予防には塩分を控えることが大切です。まずは調味料の量を見直し、計量スプーンで塩やしょうゆをはかる習慣をつけます。味付けを徐々に薄くすると舌が慣れます。

調味料と代替の工夫

減塩しょうゆや無塩のだしを使うと簡単に塩分を下げられます。香味野菜(ねぎ、にんにく、生姜)、柑橘類、酢、香辛料で風味を足すと満足感が出ます。うま味は昆布や干し椎茸、トマトで補えますが、みそやだしは量を控えめにします。

加工食品と外食の対策

缶詰や加工肉は塩分が高いので成分表示を確認し、できれば減塩タイプや水で洗って使います。外食では「味薄めで」と注文したり、ソースやドレッシングを別添えにして量を調整します。

料理法の工夫

蒸す、焼く、煮るときに素材の持つ味を活かすと塩を減らせます。ハーブや香ばしさを生かすグリル、酸味や苦味を活用したソースで満足感を得られます。

バランスを忘れずに

ナトリウムを減らすだけでなく、カリウムを豊富に含む野菜や果物を取ると相乗効果があります。小さな工夫を続けることで無理なく減塩できます。

注意点と医学的推奨

腎臓疾患のある方へ

腎臓の働きが落ちている方は、体内のカリウムを排出しにくくなります。高カリウム血症は心臓に影響を与えるため、自己判断でカリウムを増やさないでください。必ず担当医と相談し、血液検査の結果に基づいて摂取量を決めます。

服薬との関係

利尿薬やACE阻害薬、ARBはカリウムの値に影響します。薬の種類や量で推奨されるカリウム摂取が変わるため、薬を処方した医師に確認してください。サプリメントの使用も医師と相談が必要です。

高血圧対策の実践的助言

減塩と適切なカリウム摂取を両立するため、まずは医師や管理栄養士と目標を決めます。食事は野菜や果物を中心に、調理法(ゆでこぼしや水にさらす)でカリウムを調整できます。外食や加工食品は塩分が高いので注意してください。

検査と経過観察

定期的な血液検査でカリウム値と腎機能を確認します。値が安定するまでは短い間隔で検査することが多いです。記録を残して食事や症状を共有すると治療がスムーズになります。

緊急のサイン

めまい、筋力低下、動悸や息切れが出たら早めに医療機関に相談してください。これらは高カリウムの可能性があります。

医療の判断に基づく個別対応が最も安全です。疑問があれば主治医か管理栄養士に相談しましょう。

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