はじめに
この章のねらい
本記事は、妊娠中に起きる高血圧に伴う頭痛について分かりやすく伝えるために書きました。妊婦さんご本人だけでなく、ご家族やパートナーも読んでいただける内容です。日常で気づきやすいサインや、早めに受診したほうがよい場合を中心に説明します。
どんな内容を扱うか
- 妊娠高血圧症候群と頭痛の関係
- 高血圧による頭痛の特徴と他の頭痛との違い
- 危険な症状と受診のタイミング
- 診断でよく行われることや注意点
具体例ややさしい言葉を使って、読みやすくまとめます。医療の判断が必要な場合は、必ず産科やかかりつけ医に相談してください。
読み方のポイント
頭痛が続く、いつもと違うと感じたら早めにメモを取ってください。痛みの強さ、始まった時刻、他の症状(吐き気、めまい、視覚の変化など)を書き留めると受診時に役立ちます。この記事が、冷静な判断と適切な相談につながれば幸いです。
妊娠高血圧症候群と頭痛の関係
妊娠高血圧症候群とは
妊娠中に血圧が急に高くなる状態で、母体と赤ちゃんに影響することがあります。頭痛、むくみ、視界の乱れ、めまいなどがあらわれることが多いです。
なぜ頭痛が起きるのか
血圧の上昇が血管に負担をかけると、脳の血流が変わったり、血管の周りで炎症が起きたりします。また、体内の水分バランスが崩れると頭が重く感じやすくなります。たとえば、急に血圧が上がると後頭部からこめかみにかけて締めつけられるような痛みや、ズキズキする痛みを感じることがあります。
頭痛と一緒に現れることが多い症状
- 顔や手足のむくみ
- 目のかすみやチカチカ
- 吐き気や嘔吐
- 耳鳴りやめまい
これらが同時に起きる場合は妊娠高血圧症候群を疑う目安になります。
日常で気をつけること
血圧はこまめに測り、頭痛が出た時間や強さ、続く時間をメモしてください。市販の痛み止めを使う前に医師に相談しましょう。頭痛が強い、薬で効かない、視界に変化がある場合は早めに受診してください。
高血圧による頭痛の特徴
症状のあらまし
妊娠高血圧症候群で出る頭痛は、強く、長く続くことが多いです。ズキンズキンと脈打つような痛みや、押しつぶされるような重さを感じることがあります。これまで経験したことがない強さの痛みは特に注意してください。
出る場所と感じ方
後頭部や首の付け根に出やすく、両側に広がることが多いです。前頭部や目の奥に感じる場合もありますが、後頭部を中心にする例が目立ちます。動くと悪化したり、光や音に敏感になることがあります。
継続性と薬の効きにくさ
市販の頭痛薬で改善しない、数時間〜数日続くときは危険信号です。いつもと違う、効きにくい頭痛は受診を検討してください。
背後にある仕組み(やさしい説明)
急に血圧が上がると、脳の血管が影響を受けて軽いむくみや炎症が起き、頭痛や吐き気を招くことがあります。これは目に見えない変化で、放置すると症状が悪化することがあります。
すぐに注意するべき場合
頭痛に加えて視界がぼやける、激しい吐き気・嘔吐、けいれん、意識がはっきりしないときはただちに医療機関へ連絡してください。自宅で様子を見るより早めの相談が安心です。
他の妊娠中の頭痛との違い
概要
妊娠中は片頭痛や緊張型頭痛など、さまざまな頭痛が起こります。これらは主にストレスやホルモンの変化が原因で、比較的軽くなることも多いです。一方、妊娠高血圧症候群による頭痛は性質や伴う症状で見分けられます。
痛みの特徴の違い
- 緊張型頭痛:後頭部から首にかけて重く締めつけられるような痛み。持続するが激しくないことが多いです。例:パソコン作業後の鈍い痛み。
- 片頭痛:片側にズキズキする痛み、光や音に敏感になり吐き気を伴うことがあります。数時間から1日続くことがあります。
- 妊娠高血圧由来:異常に強く、持続しやすく脈打つような痛みが特徴です。頭全体やこめかみ、後頭部など場所はさまざまですが、いつもの頭痛とは明らかに違う強さを示します。
伴う症状での見分け方
妊娠高血圧では、頭痛に加えて目のかすみ、光がチカチカする、手足のむくみ、吐き気や腹痛が出ることがあります。血圧が高い場合が多いため、家や診察で血圧を測ると判断の手がかりになります。
対処と受診の目安
いつもと違う強い頭痛、特に視覚症状や持続する痛みがある場合は早めに受診してください。市販の鎮痛薬で収まらない、または短時間で何度も繰り返す場合も受診が必要です。普段の頭痛と比べて明らかに強い・長い・新しい症状があれば、我慢せずに相談しましょう。
妊娠高血圧症候群の危険なサイン
緊急性の高い症状
- 強い・長く続く頭痛:いつもの頭痛と違い、鎮痛薬で治らない場合は注意が必要です。
- 目の異常:チカチカする、視界がぼやける、光がちらつくなど。
- 吐き気・嘔吐:続く、飲めないほどつらいときは受診を。
- 手足のむくみや急激な体重増加:短期間に急に増える場合は要注意です。
- ろれつが回らない・手足の麻痺:言葉や動きに変化が出たらすぐ連絡してください。
- いつもと違う胃の痛み:右上の強い痛みは特に注意します。
どう対応するか
すぐ産婦人科に電話で相談してください。意識が消失する、けいれん、呼吸困難、大量出血がある場合は救急車を呼びます。受診時は妊娠週数、症状が始まった時刻、血圧の数値や既往を伝えると診察がスムーズです。
自宅でできること
安静にして横になる(左側を下にすると良いことが多い)、家族に症状を伝える、水分を少量ずつとる。無理しないで早めに連絡してください。
妊娠高血圧症候群の診断と注意点
健診でのチェック項目
妊婦健診では、毎回血圧と尿のチェックを行います。血圧は座った状態で測り、尿は蛋白の有無を調べます。これらは自覚症状が少ない場合でも異常を見つけるために大切です。
診断の流れ
一般に妊娠20週以降に血圧が140/90mmHg以上になると要注意です。尿に蛋白が出ているかどうかも合わせて診断します。血圧は日や時間で変わりやすいため、複数回の測定で判断します。妊娠中は血液量が増え、胎盤からの物質も影響して血圧が変動しやすくなります。
自宅での注意点
自宅でも血圧を測ると早めに変化に気づけます。測るときはリラックスして、同じ姿勢で測ることを心がけてください。頭痛やめまい、突然の手足のむくみ、胎動の減少があれば記録して医師に伝えましょう。
受診・相談の目安
次のような場合は早めに受診または連絡してください:
- 血圧が160/110mmHg以上になったとき
- 強い頭痛や視野の変化、腹の上の痛みが出たとき
- 急な体重増加や手足の強いむくみ
治療と注意点
治療は個々の状態で決まります。軽度なら経過観察を中心に、必要なら薬や入院管理を行います。薬の種類やタイミングは医師が判断しますので、自己判断で中断しないでください。
まとめと受診のポイント
妊娠中に高血圧がある場合、これまでに経験したことのない強い頭痛や長く続く痛みは危険なサインです。速やかに医師へ相談してください。妊娠高血圧症候群は放置すると母体・胎児の命に関わることがあるため、定期的な健診と早めの受診が命を守るポイントです。
受診の目安(すぐに受診・相談してください)
- 今までと違う、急に始まった強い頭痛
- 頭痛が続き、鎮痛薬で良くならない場合
- 視野のかすみやチカチカ、視力低下
- みぞおち付近の強い痛み、吐き気・嘔吐
- 手足のひどいむくみや急な体重増加
- けいれん発作や意識がはっきりしない状態
- 胎動が急に減ったと感じるとき
- 家庭での血圧が140/90mmHg以上、あるいは急上昇したとき
家庭での一時対応
- 無理をせず横になって休む(左側を下にすると血流が良くなります)
- すぐに血圧を測って記録する
- 家族や近くの人に症状を伝える
- 軽い冷却(額や首の後ろ)で楽になることがあります
- 強い症状やけいれんがあれば、迷わず救急外来へ
受診時に伝えると良い情報
- 症状が始まった時間と経過
- 最近の血圧の値(あれば記録)
- 服用中の薬や既往症
- 胎動の変化やその他の症状
早めに受診すれば、多くの場合は適切な管理で症状を抑えられます。ひとりで悩まず、少しでも不安があれば医療機関へ連絡してください。定期健診を大切にし、変化に気づいたら早めに相談することが母子の安全につながります。