高血圧予防と血圧管理

妊娠高血圧腎症のガイドラインを解説|診断基準から治療・分娩・産後管理まで

はじめに

「妊娠高血圧腎症とはどのような状態なのだろう」
「ガイドラインでは、どのような診断基準や治療方針が示されているのだろう」と気になっていませんか。

妊婦健診で血圧や尿たんぱくについて説明を受けたり、医師から妊娠高血圧腎症の可能性について話を聞いたりすると、赤ちゃんへの影響や今後の治療、いつ出産になるのかが心配になり、専門的な説明を十分に理解できないまま不安を感じてしまうことがありますよね。

この記事では、妊娠高血圧腎症のガイドラインをもとに、診断基準や治療の流れ、分娩の判断、産後に必要な管理までを順を追って説明していきます。

妊娠高血圧腎症とは?

妊娠高血圧腎症は、妊娠高血圧症候群の中でも母体や胎児への影響を考えるうえで重要な病態の一つです。

ここでは、妊娠高血圧腎症の定義と位置づけを確認したうえで、診断や病態を理解するために押さえておきたい基本事項を順を追って説明していきます。

妊娠高血圧症候群と妊娠高血圧腎症の違い

妊娠高血圧症候群は、妊娠中に高血圧を認める病気の総称です。

そのうち妊娠高血圧腎症は、高血圧に加えて蛋白尿や臓器障害、胎児発育不全などがみられる状態を指します。つまり、高血圧だけの場合と、母体や胎児への影響を示す所見がみられる場合とでは診断が異なります。

妊婦健診では血圧だけでなく、尿検査や血液検査、胎児の状態なども確認しながら判断されます。

妊娠高血圧腎症だけでなく、妊娠高血圧症候群全体の種類や違いを整理したい方は、こちらの記事も参考にしてください。
▶妊娠高血圧症候群とは?診断基準や種類・症状・治療についてわかりやすく解説

妊娠高血圧腎症の定義と診断基準

妊娠高血圧腎症は、妊娠20週以降に収縮期血圧140mmHg以上、または拡張期血圧90mmHg以上の高血圧がみられ、蛋白尿を伴う場合などに診断されます。

蛋白尿は、24時間尿で300mg以上、または尿蛋白/クレアチニン比0.3mg/mgCr以上が基準です。

また、蛋白尿がなくても、腎機能や肝機能の障害、血小板減少、肺水腫、神経学的症状、胎児発育不全などが認められる場合は、妊娠高血圧腎症と診断されることがあります。

早発型・遅発型と重症度の考え方

妊娠高血圧腎症は、妊娠34週未満で発症する「早発型」と、34週以降に発症する「遅発型」に分けられます。

特に早発型では胎児発育不全や早産を伴うことがあるため、母体と胎児の状態を慎重に確認しながら管理します。また、収縮期血圧160mmHg以上または拡張期血圧110mmHg以上の高血圧や、臓器障害などがみられる場合は、より注意が必要です。

血圧だけで判断するのではなく、妊娠週数や母体・胎児の状態をあわせて管理方針が検討されます。

妊娠高血圧腎症の診断で確認する項目

妊娠高血圧腎症は、血圧だけで診断される病気ではありません。

ここでは、妊娠高血圧腎症の診断で確認される主な項目と、診断後に実施される検査について順を追って説明していきます。

血圧の基準と正しい評価方法

妊娠高血圧腎症の診断では、妊娠20週以降に収縮期血圧140mmHg以上、または拡張期血圧90mmHg以上が確認されることが基準となります。

基本的には4時間以上あけた2回の測定で確認しますが、160/110mmHg以上の重度高血圧では、速やかな対応が必要になるため4時間を待たずに診断や治療を進めることがあります。

蛋白尿と母体の臓器障害を確認する

高血圧が認められた場合は、蛋白尿や母体の臓器障害がないかを確認します。

蛋白尿は24時間尿で300mg以上、または尿蛋白/クレアチニン比0.3mg/mgCr以上が基準です。

蛋白尿がなくても、腎機能や肝機能の障害、血小板減少、肺水腫、頭痛や視覚異常などが認められる場合は、妊娠高血圧腎症と診断されることがあります。

診断後に行われる母体と胎児の検査

妊娠高血圧腎症と診断された後は、血圧や症状の変化に加えて、血液検査や尿検査で腎機能、肝機能、血小板数などを確認します。

胎児についても、超音波検査で発育や羊水量を確認し、必要に応じてノンストレステスト(NST)などで心拍数を評価します。

こうした検査を続けながら、母体と胎児の状態に合わせて今後の管理方針を検討していきます。

妊娠高血圧腎症と診断された場合の管理

妊娠高血圧腎症と診断された後は、母体と胎児の状態を継続的に確認しながら、安全に妊娠を継続できるかを慎重に判断していきます。

ここでは、診断後の主な管理内容について順を追って説明していきます。

母体の血圧と症状を継続して確認する

妊娠高血圧腎症と診断された後は、血圧を継続して測定し、頭痛や視覚異常、みぞおちの痛み、呼吸苦などの症状がないかを確認します。

必要に応じて血液検査や尿検査も行い、腎機能や肝機能、血小板数などの変化を確認しながら、母体の状態が悪化していないか慎重にみていきます。

胎児の発育と状態を評価する

胎児については、超音波検査で推定体重や発育の経過、羊水量などを確認し、胎児発育不全がないかを評価します。

また、必要に応じてノンストレステスト(NST)などで胎児心拍数を確認します。

こうした検査の結果と妊娠週数、母体の状態をあわせて考えながら、その後の管理方法を決めていきます。

入院管理が検討されるケース

重度の高血圧や母体の臓器障害がみられる場合、胎児発育不全や胎児の状態に問題が疑われる場合には、入院管理が検討されます。

入院後は血圧や症状、胎児の状態などをこまめに確認し、病状の進み方や妊娠週数を踏まえながら、母体と胎児の安全を優先して治療や分娩の時期を検討していきます。

妊娠高血圧腎症の治療と降圧薬

妊娠高血圧腎症の治療では、母体と胎児の安全を考えながら血圧を適切に管理し、病状の進行を防ぐことが重要です。

ここでは、治療の基本的な考え方から、降圧治療を検討する血圧の目安、妊娠中に使用される主な降圧薬と注意点について順を追って説明していきます。

治療の基本的な考え方

妊娠高血圧腎症の治療では、母体の安全を守りながら、胎児の状態にも配慮して管理することが大切です。

血圧や臓器障害の有無、胎児の発育、妊娠週数などを総合的に確認し、外来・入院での管理や降圧治療、分娩の時期を検討します。

病状が進行した場合には、妊娠を継続するリスクも考えながら、母体と胎児にとってより安全な方法を慎重に判断していきます。

降圧治療を検討する血圧の目安

収縮期血圧160mmHg以上、または拡張期血圧110mmHg以上の重度高血圧では、速やかな降圧治療が検討されます。

それより低い血圧でも、血圧が高い状態が続いているか、母体や胎児の状態に問題がないかを確認しながら治療の必要性を判断します。

治療を始めた後も血圧を定期的に確認し、下がりすぎないよう注意しながら調整していきます。

妊娠中に使用される降圧薬と注意点

妊娠中の降圧治療では、母体と胎児への影響を考慮しながら、ラベタロールやニフェジピン、メチルドパなどの薬が選択されます。

一方、ACE阻害薬やARBは胎児への影響があるため、妊娠中には使用しません。

どの薬を使用するかは自己判断せず、血圧や妊娠週数、母体と胎児の状態に合わせて医師が判断します。

妊娠高血圧腎症で分娩を検討するタイミング

妊娠高血圧腎症では、妊娠を継続することによるメリットと母体・胎児へのリスクを比較しながら、分娩のタイミングを慎重に判断します。

ここでは、分娩時期を判断する主な考え方と、早期の分娩が検討される母体・胎児の状態について順を追って説明していきます。

妊娠週数と母体・胎児の状態から判断する

妊娠高血圧腎症で分娩する時期は、妊娠週数だけでなく、母体と胎児の状態をあわせて判断します。

血圧が安定し、母体や胎児に大きな問題がなければ妊娠の継続を検討しますが、病状が悪化した場合には早めの分娩が必要になることもあります。

そのため、妊娠を継続する場合と分娩する場合のそれぞれのリスクを考えながら、適切な時期を慎重に判断していきます。

早期の分娩が検討される母体の所見

重度の高血圧が続く場合や、腎機能・肝機能の障害、血小板減少、肺水腫、強い頭痛や視覚異常などがみられる場合には、早期の分娩が検討されます。

また、治療を行っても母体の状態が改善しない場合や、けいれんを起こす子癇を発症した場合には、母体の安全を優先して分娩の時期を判断します。

胎児の状態から分娩が検討されるケース

胎児発育不全が進んでいる場合や、ノンストレステスト(NST)などで胎児の状態に問題が疑われる場合にも、早期の分娩が検討されます。

また、超音波検査で羊水量の減少などがみられた場合は、妊娠週数や母体の状態も確認しながら、胎児にとってより安全な分娩時期を慎重に判断していきます。

出産後も必要な血圧管理と経過観察

妊娠高血圧腎症は、出産すると改善へ向かうことが多いものの、すぐに血圧や体調が元に戻るとは限りません。

ここでは、産後に注意したい血圧管理や受診の目安、将来の高血圧や心血管疾患との関係について順を追って説明していきます。

産後も高血圧や症状に注意する

妊娠高血圧腎症は出産後に改善することが多いものの、血圧がすぐに正常へ戻るとは限りません。

産後も血圧を確認し、頭痛や視覚異常、みぞおちの痛み、呼吸苦などの症状に注意することが大切です。

出産後に血圧が高くなったり、子癇を発症したりすることもあるため、気になる症状がある場合は早めに医療機関へ相談しましょう。

産後に「どのくらいの血圧なら受診したほうがよいの?」と迷ったときは、産後の血圧の目安や注意すべき症状も確認しておくと安心です。
▶産後の血圧が高いのはいつまで?受診の目安と注意したい症状を解説

産後12週までの経過と受診の考え方

産後は定期的に血圧を確認しながら、必要に応じて降圧薬の調整や検査を行い、産後12週までの経過をみていきます。

産後12週を過ぎても高血圧が続く場合には、妊娠に伴う一時的な高血圧ではなく、もともとの高血圧など別の原因がないかを確認するため、引き続き医療機関で評価を受けることが大切です。

将来の高血圧や心血管疾患にも注意する

妊娠高血圧腎症を経験した人は、将来、高血圧や心血管疾患を発症するリスクが高くなることが知られています。

出産後に血圧が正常へ戻った場合でも、定期的な健康診断や血圧測定を続け、自分の血圧の変化を確認しておくと安心です。

長期的な健康管理につなげるためにも、無理のない範囲で定期的にチェックしていきましょう。

妊娠高血圧腎症のガイドラインで押さえておきたいポイント

妊娠高血圧腎症のガイドラインを確認する際は、診断基準だけでなく、治療や分娩の判断がどのような考え方に基づいて行われるのかを理解しておくことが重要です。

ここでは、ガイドラインを理解するうえで押さえておきたいポイントについて順を追って説明していきます。

日本と海外のガイドラインでは一部の推奨が異なる

妊娠高血圧腎症の診断や管理については、日本と海外のガイドラインで共通する部分が多い一方、降圧治療を始める基準や分娩時期など、一部の考え方が異なることがあります。

そのため、海外の情報だけで判断せず、日本で診療を受ける場合は国内のガイドラインや主治医の方針を確認することが大切です。

治療や分娩は妊娠週数と母体・胎児の状態を含めて判断する

妊娠高血圧腎症では、血圧の数値だけで治療や分娩の時期が決まるわけではありません。

妊娠週数に加えて、母体の症状や臓器障害の有無、胎児の発育や状態などを確認しながら、管理方針を検討します。

母体や胎児の状態が悪化した場合には、妊娠を継続するリスクも考慮し、安全を優先して分娩の時期を判断していきます。

まとめ

妊娠高血圧腎症は、妊娠中に高血圧だけでなく、母体や胎児にも影響が及ぶことがあるため、状態を丁寧に確認しながら管理していくことが大切です。

診断後は血圧だけで判断せず、妊娠週数や母体の症状、胎児の発育などを確認しながら、その時々に合った治療や分娩の時期を検討していきます。

また、出産を終えればすぐに注意が必要なくなるわけではなく、産後もしばらくは血圧や体調の変化を確認する必要があります。

将来の高血圧などのリスクも考え、産後の健診や日頃の健康管理につなげていくことも大切です。

妊娠中や産後に血圧の上昇や気になる症状がみられたときは、一人で判断せず、早めに医師へ相談しながら無理のない形で経過をみていきましょう。

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