はじめに
目的
この章では、本資料の目的と読み方を丁寧に説明します。本資料は高血圧予防や健康維持のため、1日の塩分摂取量の目安と減塩のポイントを分かりやすく伝えることを目的としています。専門的な知識がなくても実践できる情報を重視しました。
対象読者
日常の食事で塩分が気になる方、家族の健康を守りたい方、医師や栄養士から減塩を勧められた方に向けています。普段の食生活を見直したい初心者にも分かりやすくまとめています。
本資料で伝えること
推奨される1日の塩分量、実際の日本人の摂取状況、減塩がもたらす効果、具体的な減塩方法と注意点、日常で使える簡単なポイントを順に解説します。例えば、インスタント食品や外食、調味料の使い方などの具体例を交えて説明します。
読み方のポイント
章ごとに短く区切ってあるので、気になる項目から読み進めてください。すぐに取り入れられる工夫を多く掲載していますので、毎日の食事に少しずつ取り入れてみてください。
推奨される1日の塩分摂取量
推奨値の基本
高血圧の方は1日の塩分摂取量を6g未満に抑えることが推奨されています。一般の成人では、男性は7.5g未満、女性は6.5g未満が目安です。心臓病や腎臓の病気を予防する観点からは、年齢や性別に関わらず1日6g未満を理想とするのがよいとされています。
身近な分量での目安
具体的には、小さじ1杯分の塩や醤油大さじ2杯分程度が6gの目安と考えてください。料理のときはこの分量感を頭に入れると分かりやすいです。
世界の基準
世界保健機関(WHO)はさらに厳しく、1日5g未満を推奨しています。より厳しい基準を目指すほど、血圧や生活習慣病のリスク低下につながります。
実生活での注意点
外食や加工食品には知らないうちに塩分が多く含まれます。例えばインスタント食品、スープ、漬物、ソース類、パンなどです。したがって、栄養表示の「食塩相当量」を確認し、合計が目安を超えないように意識してください。
無理なく守るためのコツ
まずは少しずつ減らすと味覚が順応します。出汁や香味野菜でうま味を補い、調味料は減らしてもおいしく作れます。保存食品は水で洗う、減塩醤油を使うなど工夫すると効果的です。
この章では目安と暮らしの中での実践ポイントを中心に述べました。次章では日本人の実際の摂取状況を見ていきます。
日本人の実際の塩分摂取状況
現在の状況
日本人の平均的な塩分摂取量は、男性で約10.9g、女性で約9.3gと報告されています。これは推奨される1日の摂取量を大きく上回っており、生活の中で無意識に塩分を多くとっていることを示しています。
どこから塩分が多くなるか
家庭料理ではみそ汁やしょうゆ、漬物に塩分が集中します。外食や加工食品も塩分が高く、ラーメン、弁当、惣菜、インスタント食品は要注意です。調味料やソースを少し多めに使うだけで、塩分は簡単に増えます。
推奨値に届くまでの減塩量
推奨される量に合わせるには、男性で約5g、女性で約3gの減塩が必要です。具体的にはみそ汁の味を薄める、しょうゆは計量して使う、漬物は控えめにするなど、日々の工夫で対応できます。
気づきやすいポイント
・料理の味は徐々に慣れるので、少しずつ薄くすることが続けやすいです。
・パッケージの栄養表示で食塩相当量を確認しましょう。
・外食時はスープやタレを残すだけでも大きく減らせます。
身近な工夫で塩分は確実に減らせます。まずは自分の普段の食事を見直すことから始めましょう。
減塩の効果と重要性
期待される効果
食塩摂取量を1日6g未満にすると、収縮期血圧(上の血圧)をおよそ2〜8mmHg下げる効果が期待できます。血圧が下がると、脳卒中や心臓病など重大な病気のリスクを減らせます。日常のわずかな改善が大きな健康効果につながります。
なぜ血圧が下がるのか
体内の塩分(ナトリウム)が多いと、水分をため込みやすくなり、血液の量が増えて血圧が上がります。塩分を減らすと余分な水分が減り、血管にかかる負担が軽くなります。年齢とともに血圧が上がる人でも、塩分摂取が少ない地域ではその上昇がほとんど見られません。
日常へのインパクト
長期間にわたり塩分を控えると、医療機関での治療や薬の量を減らせる可能性があります。小さな習慣の積み重ね、たとえば漬物や加工食品の量を減らすことが、将来の病気予防につながります。
安全性と注意点
実際に必要な食塩量は1〜2g程度とされ、6g未満にしても健康への悪影響はほとんどありません。ただし、腎臓病や特殊な薬を使っている方は医師に相談してください。味に慣れるには時間がかかりますが、少しずつ減らすと無理なく続けられます。
減塩の具体的な方法・注意点
食品の成分表示を確認する
買い物では「食塩相当量」を必ず見ます。表示は100g当たりや1食分で書かれていますから、実際の量に換算して把握してください。小袋や調味料の1回分も確認します。
加工食品・外食での工夫
加工品や外食は塩分が高いことが多いです。表示に「減塩」や「食塩不使用」とある商品を選び、外食では「味薄め」を頼む、スープは残すなどの工夫をします。
調味料と伝統的な和食への注意
醤油・味噌・漬物は塩分が集中します。醤油は薄めて使う、減塩醤油や合わせ技(酢・柑橘)で風味を足すと効果的です。漬物は汁を切るか少量にして箸休めにします。
調理法での工夫
だし・昆布・干し椎茸・かつお節などのうま味で塩を減らせます。レモンや酢、香草や香辛料で味に変化をつけ、焼き・蒸しで素材の味を引き出します。調理中は少しずつ味見して塩を調整します。
日常の小さな習慣
計量スプーンで塩を測る、家族で取り分ける、缶詰は水で洗うなど簡単な習慣が効果的です。塩分は徐々に減らすと味覚が慣れやすく続けやすいです。
注意点
腎臓病や心疾患で厳しい塩制限が必要な方は医師・栄養士と相談してください。市販の減塩商品は糖分や添加物が増える場合があるので成分を確認しましょう。
減塩のポイント
調味料は「つける」「和える」を基本に
調味料を直接「かける」と塩分が多くなりがちです。しょうゆやドレッシングは小皿に取り、つけながら食べる習慣にすると摂取量を抑えられます。計量スプーンで量を決めると目安がつきます。
だし・香辛料・酸味で風味を補う
昆布やかつおのだし、しいたけなどの旨味を使えば塩を減らしても満足感が得られます。にんにく、生姜、ねぎ、香草(パセリ、バジル)や唐辛子、酢・柑橘(レモン・ゆず)で香りや酸味を加えると味に深みが出ます。
加工食品やインスタントを控える
加工品やインスタントは塩分が高めです。成分表示の「食塩相当量」を確認し、低塩タイプや手作りを選ぶと効果的です。
野菜・果物でカリウムを意識する
ほうれん草、トマト、バナナ、じゃがいもなどカリウムを多く含む食品を増やすと、血圧の調整に役立ちます。腎臓病などがある方は医師に相談してください。
調理と外食の工夫
下ごしらえで茹でこぼす、漬物は水で洗う、スープは残すなどで摂取量を減らせます。外食ではソースやスープを別添えにする、味薄めを注文する習慣をつけましょう。
続けるコツ
急にゼロにせず少しずつ減らすと舌が慣れます。家族とルールを共有し、測る・記録することで習慣化が進みます。
まとめ
日々の減塩は、高血圧の予防と改善に最も効果的な取り組みの一つです。ポイントを絞って無理なく続けることで、血圧の安定だけでなく心血管疾患のリスク低下にもつながります。
主なポイント
- 目標は1日6g未満。まずは家での食事や調味料の使い方を見直します。
- 成分表示を確認し、加工食品や即席食品は塩分量の少ないものを選びます。缶詰や漬物は水で洗ったり汁を切ったりすると効果的です。
- 味付けはだしや酢、柑橘、香味野菜、ハーブで工夫します。調味料は計量して使うと減塩しやすいです。
- 外食や惣菜は量やメニューを選ぶ、または味付け控えめを頼む習慣をつけます。
- 減塩は段階的に行うと続けやすく、時間をかけて味覚が慣れます。
注意点
- 塩分を急に極端に減らすと体調を崩す場合があります。持病がある方や薬を服用中の方は医師や栄養士に相談してください。
- 塩の代替品(カリウム含有など)は人によっては向かないことがあります。特に腎臓病などがある場合は注意が必要です。
日々の小さな工夫が大きな成果につながります。まずはできることから一つずつ始めてみてください。