はじめに
「乳酸菌は免疫にどのように関係しているの?」
「乳酸菌の免疫調節作用は、論文でどこまで確認されているの?」と気になっていませんか。
乳酸菌入りの食品やサプリメントを選ぶ際に「免疫」「免疫調節」といった言葉を目にしても、実際にどのような研究結果が報告されているのか、科学的にどこまで分かっているのか判断しにくいですよね。
この記事では、乳酸菌と免疫の関係や免疫調節作用について、論文で報告されている研究結果を整理し、どこまで分かっているのかを順を追って説明していきます。
乳酸菌と免疫の関係は論文でどこまで分かっている?
乳酸菌と免疫の関係については、免疫細胞への作用や腸内環境との関係など、さまざまな研究が進められています。
ここでは、乳酸菌の免疫調節作用、菌株による違い、研究結果の見方を順に説明します。
乳酸菌による免疫調節作用が研究されている
乳酸菌には、腸の免疫細胞などに働きかけ、免疫反応を調節する可能性があると考えられています。
研究では、サイトカインの産生やT細胞、マクロファージなどの反応、IgAなどの抗体産生への影響が調べられています。
こうした研究から、乳酸菌は免疫反応を高めるだけでなく、炎症に関わる反応を調整する可能性も注目されています。
すべての乳酸菌に同じ作用があるわけではない
乳酸菌の免疫への働きは、菌の種類や菌株によって異なります。
同じ乳酸菌の仲間でも、サイトカインの産生や免疫細胞への作用には違いがあることが研究で示されています。
そのため、乳酸菌ならどれも同じ働きをすると考えず、論文で調べられた菌株を確認することが大切です。
研究結果は菌株や試験条件を分けて見る必要がある
乳酸菌の論文を読む際は、使用された菌株に加え、ヒト・動物・細胞のどの試験で得られた結果なのかを確認しましょう。
摂取量や試験期間によっても結果が異なるため、単純に比較できない場合があります。
ヒトを対象とした研究でも、一部の免疫指標に変化が見られる一方、変化が確認されなかった指標もあり、結果を分けて理解することが大切です。
論文で報告されている乳酸菌の主な免疫作用
乳酸菌の免疫作用については、免疫細胞の働きや抗体産生、自然免疫に関わる細胞・サイトカインなどを対象に研究されています。
ここでは、論文で報告されている主な免疫作用について、研究対象ごとに順に説明します。
T細胞やTh1・Th2バランスへの作用
乳酸菌には、T細胞の働きやTh1・Th2のバランスに影響する可能性があると考えられています。
研究では、IL-12やIFN-γなどの産生を通じて、Th1の反応が促されるかどうかが調べられています。
また、乳酸菌によってはTh2に関わる反応を抑えたり、免疫を調整するTregの働きに関わったりする可能性も報告されています。
IgAやIgEなど抗体産生への作用
乳酸菌は、腸の粘膜を守るIgAや、アレルギー反応に関わるIgEへの影響も研究されています。
特定の乳酸菌では、IgAの産生を促したり、アレルゲンに対するIgEの増加を抑えたりする結果が報告されています。
こうした研究から、乳酸菌がB細胞による抗体産生を調節する可能性も注目されています。
NK細胞の活性に関する研究
乳酸菌には、ウイルス感染細胞などに対応するNK細胞の働きに影響する可能性もあります。
研究では、特定の乳酸菌を用いてNK細胞の活性やIFN-γの産生などが調べられています。
一部の菌株ではNK細胞の活性が高まる結果も報告されていますが、その働きは菌株や体の状態によって異なると考えられています。
pDCやIFN-αに関する研究
乳酸菌と免疫の関係では、pDC(形質細胞様樹状細胞)やIFN-αへの影響も研究されています。
pDCはウイルスなどに対する免疫反応に関わる細胞で、刺激を受けるとIFN-αを産生する働きがあります。
特定の乳酸菌がpDCを刺激し、IFN-αの産生などを通じて免疫反応に関わる可能性が注目されています。
乳酸菌と免疫に関する具体的な研究・論文
乳酸菌と免疫の関係については、免疫細胞の反応を調べる基礎研究から、アレルギーや感染防御に関する研究まで幅広く報告されています。
ここでは、乳酸菌の免疫調節作用、アレルギー、感染防御、ヒトを対象とした臨床研究について順に説明します。
乳酸菌の免疫調節作用を調べた研究
乳酸菌の免疫調節作用については、免疫細胞の働きやサイトカインの変化を調べる研究が行われています。
研究では、NK細胞や食細胞の働き、IL-10やIFN-γなどの産生、IgAなどの抗体への影響が評価されています。
こうした研究から、乳酸菌が自然免疫と獲得免疫の両方に関わる可能性が注目されています。
アレルギーに対する乳酸菌の研究
乳酸菌とアレルギーの関係では、免疫反応やアレルギー症状への影響が研究されています。
動物研究では、乳酸菌の摂取によってIL-4やIL-5などの産生が変化した報告があります。
また、ヒトを対象とした研究でも、特定の乳酸菌を含む発酵乳を摂取し、アレルギー性鼻炎の症状や生活の質への影響が調べられています。
感染防御に関わる免疫機能を調べた研究
乳酸菌には、病原体を取り込む食細胞や、感染した細胞に対応するNK細胞の働きに影響する可能性があります。
ヒトを対象とした研究では、特定の菌株を摂取することで、食細胞やNK細胞の活性が高まった報告があります。
また、ビフィズス菌を用いた研究では、免疫細胞の働きと上気道感染症の発生状況との関係も調べられています。
ヒトを対象に乳酸菌の作用を調べた臨床研究
ヒトを対象とした臨床研究では、乳酸菌などを一定期間摂取し、免疫細胞の働きや免疫指標の変化を調べています。
例えば、健康な成人50人を対象としたHN019の3週間の研究では、食細胞やNK細胞の活性が評価されました。
また、健康な成人30人を対象としたBB-12の4週間の研究でも、NK細胞やT細胞の働き、上気道感染症の状況などが調べられています。
乳酸菌と免疫の論文を読むときに確認したいポイント
乳酸菌と免疫に関する論文を読むときは、研究に使われた菌株や対象、評価方法を確認することが重要です。
ここでは、論文の研究結果を正しく読み取るために確認したいポイントを順に説明します。
研究対象となった乳酸菌の菌株を確認する
乳酸菌の論文を読むときは、研究に使われた菌の種類だけでなく、菌株名まで確認しましょう。
同じ種類の乳酸菌でも、菌株によって免疫への働きが異なる場合があります。
そのため、ある菌株で確認された作用が、ほかの菌株にも当てはまるとは限らず、研究対象を正しく把握することが大切です。
細胞・動物・ヒトのどの段階の研究か確認する
乳酸菌の研究には、細胞を使った試験や動物実験、ヒトを対象とした臨床研究があります。
細胞や動物で免疫への働きが確認されても、ヒトが摂取した場合に同じ効果が得られるとは限りません。
また、ヒトを対象とした研究でも、参加人数や摂取期間などを確認し、結果を適切に理解することが大切です。
研究対象者と免疫効果の評価指標を確認する
ヒトを対象とした論文では、参加者の年齢や健康状態、どの免疫指標を調べたのかを確認しましょう。
研究では、NK細胞の活性やサイトカイン、IgAなど、さまざまな指標が使われています。
そのため、免疫への効果が報告されていても、具体的にどの指標がどの程度変化したのかを確認することが大切です。
研究結果を乳酸菌全体の効果として判断しない
特定の乳酸菌で免疫への働きが確認されても、すべての乳酸菌に同じ効果があるとは限りません。
研究によって使用する菌株や摂取量、試験期間などが異なるため、結果をそのまま比較することは難しい場合があります。
論文を読む際は、その研究で確認された内容と、乳酸菌全体に共通する働きを分けて考えましょう。
まとめ
乳酸菌と免疫の関係については、免疫細胞やサイトカイン、IgAなどの抗体、NK細胞活性などを対象にさまざまな研究が行われています。
一方で、免疫への作用は乳酸菌の種類や菌株、摂取量、試験期間、研究対象によって異なるため、特定の研究結果を乳酸菌全体の効果として判断することはできません。
論文を読む際は、使用された菌株に加えて、細胞・動物・ヒトのどの段階で行われた研究なのか、どの免疫指標がどのように変化したのかを確認することが重要です。
乳酸菌の免疫調節作用を正しく理解するためにも、研究で実際に確認された範囲と、そこから推測される内容を分けて捉えましょう。